No-D NMR 重水素化溶媒を使用しないNMR測定法の有用性
NM180017
No-D NMRとは、重水素化溶媒を使用せずに目的試料の1H信号を高感度で測定する手法です。
そのため合成に使用した反応溶液そのままで測定を行うことが可能です。
通常は重水素化溶媒の重水素信号を利用して行う分解能調整、軽溶媒の1H信号を使用して同じように行うため、重水素信号がなくとも良好な分解能でスペクトルを得ることができます。
No-D NMRの魅力
No-D NMRは以下の要望に対して有効な測定法です。
- ● 試料が不安定で合成後に反応溶液でそのまま測定したい!
- ● 反応溶媒の除去→重水素化溶媒に溶解、といった試料調製の手間を減らしたい!
- ● 重水素化溶媒のコストを抑えたい!
JEOLのNMR装置なら、測定は全自動!
Delta NMRソフトウェアは以下の①~⑤の操作をすべて全自動で行いますので、煩わしい最適化操作は必要ありません。
- ① 分解能調整
- ② 溶媒信号の検出
- ③ 溶媒信号の消去
- ④ データ処理
- ⑤ 化学シフトの補正
通常LOCKをかけないで測定した場合、正しい化学シフトで信号が得られないため、化学シフトの補正が必要になります。図1. a.では軽溶媒の信号が2.99ppmに観測されています。一方b.ではc.と同等の結果が観測されています。

図1. 5mg ロテノンの各1Hスペクトル (JNM-ECZ500Rで測定)
- 消去する軽溶媒の種類
- 消去する信号の数
の2つのみで誰でも簡単にお使いいただけます(図2)

図2. No-D NMRの設定画面(Delta V5)
No-D NMRの利用例1 交換性の1Hの観測
通常D2OやCD3ODなどの交換性の重水素信号を含む溶媒を使用した場合、試料中のNH等の交換性1Hとの化学交換が起こり、信号が観測されなくなってしまいます。しかしNo-D NMRは1H-1Hの交換になるため、場合によっては交換性の1Hの信号観測することが可能です(図3)。

図3. 2.5mg L-Tryptophanの各1Hスペクトル(JNM-ECZ600Rで測定
No-D NMRの利用例2 混合溶媒への適用
No-D NMRでは複数点の溶媒消去が可能であるため、CH3OH等の溶媒信号が複数出る溶媒や混合溶媒に溶かした試料について有効な測定手法となります。また図4, 図5のスペクトルのように溶媒のCH3CNの13Cサテライト信号が試料の信号と重なる化学シフトに観測されてしまう場合には13Cデカップリングが効果的です。13Cデカップリングにより重なった信号が観測できるようになります。 図4,5ではわかりやすくするため、a. , b. , c.の化学シフトが同じになるよう補正しています。

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