ナノ結晶から水素結合を可視化: TEMとNMRのYOKOGUSHIアプローチ
NM190004
TEMと固体NMRを量子化学計算を通じて有機的に統合することにより、100 nm~1 μmの非常に小さな結晶から結晶構造を解析し、水素結合まで明らかにすることが可能となりました。 TEMの測定モードのひとつである、電子回折を用いて、ナノ結晶から結晶構造を明らかにします。しかしながら、電子回折には 1)水素が見えない、2)原子番号の近い炭素・窒素・酸素の区別がつかないといった問題がありました。一方で、固体NMRは、1)直接水素原子 (1H) を観測できる、2)炭素 (13C) ・窒素 (14N, 15N) を別々に直接観測できる手法です。そこで、量子化学計算を用いて電子回折と固体NMRを有機的に統合することにより、結晶構造解析を実現しました。この手法では、微結晶から構造を決定できるのみならず、混ざり物からも構造解析できるというメリットがあります。手法の確認として構造がすでにわかっているL-histidineを用いて微結晶から構造解析を行いました。次に、構造未知のCimetidine (結晶形B) の構造解析を行いました。 本手法は、製剤から低分子医薬品の構造を決定するために活用されることが期待され、また、PCP/MOFといったしばしば微小結晶しか得られない構造機能材料の解析への活用が期待されます。

図 Cimetidine (結晶形B) の微結晶と決定された結晶構造
赤丸で示されたcimetidine (結晶形B) は、針状結晶であり単結晶X線回折で解析できる大きさの単結晶がなかなか得られなかった。また、結晶形Cが混ざることが多く、粉末X線回折による構造解析も困難であった。そこで、電子回折と固体NMRを有機的に統合することにより、世界で初めて結晶構造を解明した。
参考文献
C. Guzmán-Afonso †, Y.-l. Hong†, H. Colaux, H. Iijima, A. Saitow, T. Fukumura, Y. Aoyama, S. Motoki, T. Oikawa, T. Yamazaki, K. Yonekura & Y. Nishiyama*, Nat. Commun. 10 (2019) 3537 DOI: 10.1038/s41467-019-11469-2
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