ROYALプローブ™ HFXを用いたフッ素とアミド間の水素結合の解析: 14Nデカップリング 1H–19F HETCOR
NM190011
含フッ素、及び含窒素有機化合物は、医薬や材料科学などの様々な分野で用いられています。このような化合物の多くは分子のコンホメーションや分子間に働く相互作用により、特異な機能を持つことが知られています。そのため、分子内/分子間に働く弱い相互作用の解析が重要となります。ここでは、フッ素化ベンズアニリド1のN-HとF間に働く水素結合の解析手法として、14Nデカップリング1H–19F HETCORをご紹介します。

14Nデカップリング条件下での1H NMR測定
NMRは水素結合の解析において力を発揮する分析法です。そのような目的では、スピン結合定数を求めることが重要です。図1(a)にフッ素化ベンズアニリドの1H NMRスペクトルを示します。最も低磁場の信号がアミド1H (H11)の信号です。14N核の影響により、信号がブロード化しています。このままでは、結合定数を求めることができません。図1(b)は14Nデカップリングを行った場合のスペクトルです。アミド1Hの信号がシャープな信号として観測されています。アミド1H信号がダブルダブレットに分裂しているのは、二つのフッ素(F5とF6)と水素結合を介したスピン結合によるものです。

図1. (a)1の1H NMRスペクトル (b)1H{14N} NMRスペクトル
試料: 36 mg フッ素化ベンズアニリド/CDCl3
使用装置: JNM-ECZ400S、ROYALプローブ™ HFX (14N核測定対応プローブ)
14Nデカップリング1H–19F HETCOR(異種核COSY)の測定
14Nデカップリングありとなしの条件で一次元1H–19F HETCORを測定しました(図2)。1H NMRと同様に14Nデカップリングを行うことで、アミド1Hはシャープな信号として観測されます。一次元HETCORはアンチフェイズ信号で分かりやすくスピン結合定数を求めることができます。図3に示すように14Nデカップリング条件下での二次元HETCOR測定も可能です。

図2. 1の一次元HETCORと14Nデカップリング一次元1H–19F HETCORスペクトル(a:F5を選択励起 b:F6を選択励起)

図2. 1の14Nデカップリング二次元1H–19F HETCORスペクトル
参考文献
G. N. Manjunatha Reddy, M. V. Vasantha Kumar, T. N. Guru Row, N. Suryaprakash, Phys. Chem. Chem. Phys., 12, 13232–13237 (2010).
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