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13Cの高感度定量測定 "Q-POMMIE"

NM190016

POMMIE (Phase Oscillations to MaxiMIze Editing)は、DEPTと同様にJCHを利用した1Hからの磁化移動により13Cを高感度で測定できる手法です。DEPTがパルスのフリップ角でスペクトルを編集するのに対して、POMMIEはパルスの位相で編集します。
図1にQ-POMMIE (Quantitative POMMIE)1) のパルスプログラムを示します。Q-POMMIEはΔとパルス位相を積算ごとに細かく可変させることで、JCHの大きさにばらつきがあってもある程度均一に磁化移動するように調整し、信号定量性を向上させています。本測定はDEPT45°と同様に4級炭素は検出されず、CH3,CH2,CHが同じ位相で検出されます。

Q-POMMIEは定量測定に使用する測定法ですのでT1の5倍から10倍のパルス繰り返し時間を設定していただく必要があります。13Cの逆ゲートデカップリングでは13CのT1を基準に待ち時間を設定していますが、Q-POMMIEでは13Cと結合した1HのT1を基準に設定します。感度の良い1H核での緩和時間測定で条件検討が可能であるため、低濃度故に13CのT1測定が難しい試料で、(4級炭素を除く)13Cの定量を効率的に行いたい場合は有効な測定法といえます。さらに1Hの磁化を利用している分通常の13Cの逆ゲートデカップリングよりもS/Nも良いです。

図2は10% 珪皮酸-cis-3-ヘキセニルエステル(以下CAHE)/CDCl313C{1H}の逆ゲートデカップリングスペクトルと、Q-POMMIEのスペクトルになります。4級炭素が検出されないというデメリットはありますが、より高感度の信号が得られるため、4級炭素以外の13Cを高感度で定量したい場合に有効です。各信号の積分比は表1に示す通りで、通常のDEPT45ではCH信号(1JCHの大きな信号)は相対的に小さく出てしまいますがQ-POMMIEではおおよそ13Cと同等の結果が得られています。

Q-POMMIEの特徴(定量条件時の13C測定との比較)

  • 高感度
  • 4級炭素、溶媒の信号が検出されない
  • 繰り返し時間の条件検討が容易
  • 最低積算回数が96回と多い
図1: Q-POMMIEのパルスプログラム

図1: Q-POMMIEのパルスプログラム

図2: a) 13C{1H} 逆ゲートデカップリング

図2: a) 13C{1H} 逆ゲートデカップリング

b) : Q-POMMIE

b) : Q-POMMIE

測定試料:10% CAHE/CDCl3
使用装置:JNM-ECZ400S+ROYALプローブ™HFX
積算回数:384回
パルス繰り返し時間:46s

表1: 各測定法におけるそれぞれの信号の積分値(4級炭素を除く)

CS(ppm)/Exp 13C{1H} 逆ゲートデカップリング Q-POMMIE 参考:DEPT45
14.3(CH3) 1.00 1.00 1.00
20.7(CH2) 0.98 0.97 0.92
26.9(CH2) 0.89 0.94 0.94
64.2(CH2) 0.99 1.07 1.07
118.3(CH) 0.95 0.97 0.69
123.9(CH) 0.91 0.92 0.67
128.1(CH)*2 1.85 1.87 1.44
129.0(CH)*2 1.96 1.92 1.45
130.3(CH) 0.95 0.99 0.67
134.5(CH) 0.87 0.85 0.64
144.8(CH) 0.95 0.96 0.66

UV開始剤への適用

Q-POMMIEの測定が有効な例としてUV開始剤の測定結果を図3に示します。この試料では通常の13C測定時には77.3ppmの信号が溶媒のCDCl3と重なってしまうため積分をとるどころか信号の検出すら困難です。
対してQ-POMMIEではDEPTと同様に溶媒信号が観測されないため、溶媒信号が消えて重なった信号が検出できるようになります。つまり本測定では溶媒信号に重なってしまう信号についても定量を行うことが可能です。

図3: a) <sup>13</sup>C{<sup>1</sup>H} 逆ゲートデカップリング b) Q-POMMIE

図3: a) 13C{1H} 逆ゲートデカップリング b) Q-POMMIE

試料量: 10mg 試料/CDCl3
使用装置: JNM-ECZ500R+5mm SuperCOOLプローブ
積算回数: 960回
パルス繰り返し時間: 20s

参考文献

1) Anal. Chem. 2008, 80, 8293-8298

試料ご提供:東洋インキSCホールディングス株式会社 伊藤 祐治様

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