ROSYを用いたglycineの結晶形ごとのスペクトルの分離
NM210009
ROSY
ROSY (Relaxation Ordered SpectroscopY) は固体混合物中の各成分の1Hの縦緩和時間の違いを用いて、化合物ごとに13C CPMASスペクトルを分離する手法です。溶液中ではシグナルごとに固有の縦緩和時間を持ちますが、固体中では1H同士の双極子相互作用によってスピン拡散が起きるため一定距離内のドメインでは全ての1Hが同一の縦緩和時間を持ちます。ROSY法ではこの1Hの縦緩和時間の違いを用いて13Cスペクトルをドメインごとに分離します。
Fig1. pulse sequence of ROSY
結晶多形を持つglycineへの適用
ROSYは混合物サンプルに関して使うことが多いですが、単一化合物でも緩和時間の異なる複数の結晶形を持つ場合、ROSYによって結晶形ごとにスペクトルを分離することが可能です。一例として、 常温で2種類の安定な結晶形 (α型 : 立方晶、γ型 : 六方晶) を持つglycineについて、ROSYを適用した結果を示します。通常のCPMAS (Fig.2) では、glycineの2つの炭素原子に対してそれぞれ2つの結晶形に対応するシグナルが観測されています。このサンプルにROSY法を適用すると、各結晶形に対応するシグナルがy軸上に分離して観測されました (Fig.3)。このように、ROSYは結晶多形を持つ分子の結晶構造の解析に有用です。※α, γの帰属はそれぞれの結晶形のみを含むサンプルを用いて行いました (data not shown)。
Fig2. 13C CPMAS spectrum
Spectrometer | JNM-ECZ400R |
---|---|
probe | 4 mm HXMAS probe |
MAS speed | 15 kHz |
Software | Delta v.5.3.3 |
pulse sequence | cpmas_toss.jxp (Fig.2), rosy.jxp (Fig.3) |
Fig3. ROSY spectrum
参考文献
Y. Nishiyama, M.H. Frey, S. Mukasa, H. Utsumi, J. Magn. Reson. 202 (2010) 135.
- このページの印刷用PDFはこちら。
クリックすると別ウィンドウが開きます。
PDF 821.4 KB