JSM-7900F/EBSD ホチキスの針の物理学
SM2021-01
目的: ホチキスの針の破壊を内部の結晶構造から見る。
試料:
① 紙を留めている状態
② ①から針をまっすぐに戻した状態
③ ②からさらに180度曲げて針が折れた状態

破面観察
はじめに破壊試験で一般的な破面観察を行った。
針の破面の内・中・外側のいずれの箇所もディンプルが形成されていることから、延性破壊によるものと推測される。

CP(CROSS SECTION POLISHER™)断面観察
写真の赤枠領域をCPを用いて長手方向に断面加工した。
SEMで観察すると、直線に伸ばした②の段階ですでに針の内側から破壊が始まっていることがわかる。



断面試料のEBSD IPF*-Zマップ 250倍 *Inverse pole figure

15 kV, x250, 70 nA, 収集速度1485 pps, 収集時間33分, ステップサイズ200 nm, 領域300 μm x 400 μm
破面観察では内,中,外側のいずれも同じ延性破壊が起きているように見えていたが、③を見ると針の内側と外側で結晶粒の様子が異なっている。
針の外側のEBSD IPF*-Zマップ 1000倍 *Inverse pole figure

15 kV, x1,000, 70 nA, 収集速度1485 pps, 収集時間31分, ステップサイズ50 nm, 領域100 μm x 70 μm
針の外側は圧縮応力が加わり微小粒に変化した後、延性破壊が起きたと思われる。
逆極点図

③で配向性が変化した。
針の内側のEBSD IPF*-Zマップ 1000倍 *Inverse pole figure

15 kV, x1,000, 70 nA, 収集速度1485 pps, 収集時間31分, ステップサイズ50 nm, 領域100 μm x 70 μm
内側は引張り応力により結晶が伸びた後、延性破壊が起きた。
結論:ホチキスの針の破壊を内部の結晶構造から解析した。
- 針の内側は引張り応力により結晶が伸びた後、延性破壊により破断した。
- 針の外側は圧縮応力が加わり微小粒に変化した後、延性破壊が起きた。
- EBSDで内部の結晶を解析することで内と外側の破壊過程の違いを見ることができた。
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