FE-EPMAによる鋭敏化分析
XM2019-01
概要
鋭敏化とは、ステンレス鋼において不適切な熱処理等により粒界に炭化物が析出することによって、その近傍にCr欠乏が生じる現象である。そのため粒界付近の耐食性が低下し、腐食の原因となる。鋭敏化の初期状態においてはその領域は非常に狭く濃度変化も僅かである。これらの粒界偏析は、炭化物が析出した近傍から発生するが、場所によりその進行具合が異なるため、複数の粒界を一度に分析できるEPMAの面分析が効果的である。
市販のステンレス鋼 (SUS316L) にて、腐食試験の時間を段階的に変化させ (100h, 300h, 4,800h) 、それぞれの段階において面分析の結果を比較した。
SUS316Lの組成
mass[%]
C | N | O | Si | P | S | Ca | Cr | Mn | Ni | Cu | Mo | Fe |
0.014 | 0.026 | 0.003 | 0.56 | 0.025 | 0.001 | 0.0001 | 16.82 | 0.66 | 13.78 | 0.21 | 2.16 | Bal. |
試料ご提供 : 国立研究開発法人物質・材料研究機構 木村 隆 様
Cr マップ比較


まず、200倍の面分析によって、鋭敏化している視野探しを行った。次に、4,000倍にて面分析を行い、それぞれの倍率においてCrの結果を比較した。
熱処理時間を長くするほど、鋭敏化の進行が進んでいることが確認できた。
鋭敏化の評価

- 熱処理100hの試料は、Siにおいて僅かな欠乏層が確認できた。
- 熱処理300hの試料は、炭化物に含まれるCr, Moが多くなり、Siにおいては欠乏層が確認できた。
- 熱処理4,800hの試料は、Cr, Si, Mo全てにおいて欠乏層が確認できた。
これらのことから、熱処理4,800hの試料が最も鋭敏化が進行していると考えられる。
- このページの印刷用PDFはこちら。
クリックすると別ウィンドウが開きます。
PDF 1.35MB