ESR 測定条件 **マイクロ波パワー ② **
ER220005
マイクロ波パワー依存性-室温と低温

図1. 炭素試料のESR信号
炭素試料から観測されるESR信号のマイクロ波パワー依存性を25°Cと-150°Cで測定しました。温度制御には温度可変装置 (ES-13060DVT5) を用いました。縦軸に観測されるESR信号強度 (図1のA)、横軸にマイクロ波パワーの平方根の値を示しています (図2 )。
一般的にマイクロ波パワーによるESR信号の飽和現象は、不対電子濃度や温度等の影響を受けます。不対電子濃度が低い場合や低温ではスピン-格子緩和時間T1が長くなることにより、ESR信号の飽和が起こりやすくなります。そのため飽和していないESR信号を観測するためには、測定温度でのマイクロ波パワー依存性を確認し、信号強度が直線的に増加している範囲内のマイクロ波パワーを利用します。
25°Cでは、(マイクロ波パワー)1/2 対して0.36 mW (平方根の値: 0.6) 付近から、-150°Cでは、マイクロ波パワーが0.09 mW (平方根の値: 0.3) 付近からESR信号強度の飽和現象が観測されています。今回の炭素試料の場合、室温から-150°Cまで飽和なくESR信号を観測するためには、マイクロ波パワーを0.09 mW以下に設定しておく必要があります。試料や測定温度により適切な値が異なるため、未知試料を測定する際にはマイクロ波パワー依存性の確認が必要です。
図2. 炭素試料のマイクロ波パワー依存性 (25°Cと-150°C)