Delta shape viewerツールの使い方
NM220017
はじめに
弊社NMR解析ソフトウェアDeltaのver.6 にてshape viewerの機能が大幅に追加された。shape viewerは、パルスの位相やラジオ波強度の確認、およびそれらのパルスの励起プロファイルをシミュレーションすることができるツールである。本アプリケーションノートではshape viewerの使い方について説明する。
shape viewerを起動する
shape viewerはDeltaを立ち上げたときに最初に出てくるウィンドウから補助ツール>計算機>shape viewer、あるいは分光計のコントロール画面からツール>shape viewerをクリックすることで起動することができる。

各パラメータの説明
基本的なパラメータについて説明する。

①shape file | パルスのラジオ波強度および位相の時間変化の情報を含んだshape fileを指定する。 |
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②コイル | LFあるいはHFのコイルを指定する。 |
③核種 | 核種を指定する。 |
④Square reference 90 | プローブファイルの矩形波の90度パルス幅が自動的に入力される。 |
⑤Square reference | プローブファイルの矩形波の90度パルス幅に対応するattenuatorが自動的に入力される。 |
⑥Target pulse | 見たいパルスのパルス幅を指定する。 |
⑦Target angle | 見たいパルスのflip angleを指定する。 |
⑧Target atn | ④-⑦から適切なattenuator値が計算される。 |
⑨Diff. power… | プローブファイルのattenuator値と実際に用いるattenuatorの違いを計算する。 |
⑩Est. ΔB0… | 予想される励起範囲が出力される。 |
⑪B1 max | ラジオ波強度の最大値が出力される。 |
shape fileの種類によっては上で挙げたパラメータ以外の入力が要求される場合、あるいは他のパラメータが出力される場合もある。
Shapeの表示
shape fileを指定すると、各shapeのラジオ波強度、位相、offsetの時間変化が表示される。横軸が時間となっており、縦軸が上からラジオ波強度、位相、offsetとなっている。位相については360度以上の位相を用いる場合には折り返されて表示される。

励起プロファイルのシミュレーション
設定したパルスの励起プロファイルをシミュレーションすることが可能である。シミュレーションのパラメータについて説明する。
①Simulation type | 1D (ΔB0) 、1D (ΔB1)、2Dの3種類から指定する。詳細は後述。 |
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②Initial magnetization | Mx, My, Mzのうちから磁化の初期状態を指定する。 |
③ΔB0 Sim. Width | 励起範囲 (Width) およびシミュレーションの細かさ (points) を指定する。 |
④ΔB1/B1 Sim. range | ラジオ波強度のずれの範囲 (start, stop) を指定し、シミュレーションの細かさ (step) を指定する。 |
1D シミュレーション (ΔB0)
設定したパルスを照射した際、中心周波数からずれた周波数 (ΔB0) において励起効率がどのように変化するかをシミュレーションする。Fig. 2に矩形波inversionパルスの1D (ΔB0) 励起プロファイルを示す。横軸がΔB0 (kHz)であり、上から位相 (deg) 、横磁化の大きさ (x磁化およびy磁化の二乗平均) 、x磁化 (緑) およびy磁化 (赤) の大きさ、z磁化の大きさを示す。Inversionパルス、すなわちz磁化を-zまで回転させるパルスを打ったためこの図で最も重要なのはz磁化であり、矩形波inversionパルスの場合だと下に行くほど励起効率がよく、中心周波数からずれたときに励起効率が大きく下がることが分かる。このように1D sシミュレーション (ΔB0) によってパルスの励起範囲の広さを見積もることが可能である。

Figure 2 矩形波inversion パルスの励起効率の周波数依存性のシミュレーション
1D シミュレーション (ΔB1)
設定したパルスを照射した際、ラジオ波強度がずれた場合 (ΔB1) に中心周波数における励起効率がどのように変化するかをシミュレーションする。Fig. 3に矩形波inversionパルスの1D (ΔB1) 励起プロファイルを示す。横軸がラジオ波強度のずれ (ΔB1/B1) であり、上から位相 (deg) 、横磁化の大きさ (x磁化およびy磁化の二乗平均)、x磁化 (緑) およびy磁化 (赤) の大きさ、z磁化の大きさを示す。 Inversionパルス、すなわちz磁化を-zまで回転させるパルスを打ったためこの図で最も重要なのはz磁化であり、ラジオ波強度がずれた場合に励起効率が大きく下がることが分かる。このように1D シミュレーション (ΔB1) によってパルスのラジオ波強度のずれへの耐久性を見積もることが可能である。

Figure 3 矩形波inversion パルスの励起効率のラジオ波強度依存性のsimulation
2D シミュレーション
上で説明した1D シミュレーション (ΔB0) と1D シミュレーション (ΔB1) を同時に行い、横磁化の大きさ (x磁化およびy磁化の二乗平均)、x磁化の大きさ、y磁化の大きさ、z磁化の大きさを2次元の等高線の図として表示する。縦軸がラジオ波強度のずれ (ΔB1/B1) 、横軸が励起範囲 (ΔB0) となっており、磁化の大きさが-0.9以下の部分を赤 (-0.9) - 黄色 (-1.0) で、0.9以上の部分を青 (0.9) - 緑 (1.0) で着色している。Fig. 4に矩形波inversionパルスの2D 励起プロファイルを示す。Inversionパルス、すなわちz磁化を-zまで回転させるパルスを打ったためこの図で最も重要なのはz磁化であり、励起範囲が狭く、ラジオ波の強度への耐久性も低いことが分かる。このように2D シミュレーションによってパルスの励起範囲およびラジオ波強度のずれへの耐久性の両方を同時に見積もることが可能である。

Figure 4 矩形波inversion パルスの励起効率の2D simulation
まとめ
shape viewerによってパルスのラジオ波強度および位相の時間変化を見ることが可能である。
パルスの励起効率をシミュレーションによって見積もることが可能である。
シミュレーションには1D (ΔB0) 、1D (ΔB1) 、 2D の三種類があり、それぞれ中心周波数からのずれ、ラジオ波強度のずれ、あるいはその両方について励起効率の変化を見積もることが可能である。