JASONの化学シフト予測機能を使おう! -化学シフト予測による解析結果の確認 (1) -
NM220018
NMRによる構造解析の結果は、様々な測定データの情報で総合的に判断する必要があります。近年はソフトウェアによる化学シフト予測の進歩が目覚ましく、測定結果と併せて利用することで、解析の確度を向上させることができます。ここでは、JASON*による化学シフト予測の活用例をご紹介します。 (JASON:JEOL Analytical Software Network)
HMBCによる推定構造の確認
分子式がC6H10O2の化合物の解析例をご紹介します。この化合物は13C, DEPT, HMQC, COSYで二つの推定構造を導き出すことができます(Fig.1)。推定構造IとIIの違いはカルボニル炭素Fと結合する酸素の位置です。そのため、HMBCでFと相関がある1Hを確認します。FはHC, HD, HEと相関が観測されました。 HMBCは、主に2, 3結合離れた1Hと13Cの相関が観測されます。推定構造IはFと相関のある1Hは3結合以内に存在しますが、推定構造IIは、FとHEは4結合離れています。
Fig. 1 二つの推定構造
Fig. 2 HMBCで観測されたnJCH相関の結合数
JASONの化学シフト予測機能による推定構造の確認
HMBCとJASON化学シフト予測を併用することで、解析の確度を向上させることができます。推定構造IとIIにJASONの化学シフト予測を適用しました(Fig. 3)。Table. 1に実測値と化学シフト予測値を示します。推定構造Iは実測値と予測値が良く一致しています。HMBCと化学シフト予測の結果より、推定構造IIの可能性は低く、推定構造Iが正しい構造と考えらえます。
Fig. 3 化学シフト予測値 (ppm)
Table. 1 実測値と予測値