JASONの化学シフト予測機能を使おう! -化学シフト予測による解析結果の確認 (2) -
NM220019
NMRによる構造解析の結果は、様々な測定データの情報で総合的に判断する必要があります。近年はソフトウェアによる化学シフト予測の進歩が目覚ましく、測定結果と併せて利用することで、解析の確度を向上させることができます。ここでは、JASON*による化学シフト予測の活用例をご紹介します。(JASON: JEOL Analytical Software Network)
化学シフトによる推定構造の判別
分子式がC15H10O4の化合物の解析例をご紹介します。この化合物は基本的な測定法 (1H, 13C, DEPT, HSQC, COSY, HMBC) と1,1-ADEQUATEを解析することで、二つの推定構造を導き出すことができます (Fig. 1)。二つの推定構造の違いは酸素の位置で、炭素Kの13Cの化学シフトに注目します。Kは推定構造Iでは、酸素に結合しています。ベンゼンの化学シフトは128.5 ppmです。ベンゼンに水酸基 (-OH) やメトキシ基 (-OCH3) が結合すると、約20~30 ppm低磁場シフトすることが知られています (化学シフトの加成性)。Kの化学シフトは157.9 ppmでした。これより、Kに酸素が結合した推定構造Iが正しい構造と考えられます。
JASONの化学シフト予測機能による推定構造の確認
ソフトウェアの進歩により、化学シフトの加成性は化学シフト予測で代用することが可能です。推定構造IとIIに、JASONの化学シフト予測を適用しました (Fig. 2)。推定構造IIは、Kとカルボニル炭素Mの予測値と実測値には約20 ppmの差があります (Table. 1)。推定構造Iは、予測値と実測値はほぼ同等の値です。化学シフト予測により、推定構造IIの可能性は低く、推定構造Iが正しい構造と考えられます。

Fig. 1 二つの推定構造

Fig. 2 化学シフト予測値 (ppm)

Table. 1 実測値と予測値