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半整数四極子核の固体NMR ⑦ MQMASの基本的なシーケンス

NM240007

2-pulse MQMAS

2-pulse MQMASは最初に開発されたMQMASのシーケンスである (Fig. 1) 。1つ目のパルスで3量子遷移を励起し、2つ目のパルスで観測可能な-1量子遷移へと移し、信号を取り込む。シーケンスとしては単純であるがコヒーレンスの移動が非対称であり、純粋吸収型のスペクトルが得られず、線形が歪むという問題がある。Fig. 1にRbNO387Rb 2-pulse MQMASのスペクトルを示す。線形が歪んでおり、解析が困難である。

Figure 1 | 2-pulse MQMASのシーケンス (左) とRbNO3のスペクトル (右)  

Z-filter MQMAS

Z-filter MQMASは2-pulse MQMASの持つ線形の歪みをなくす方法の一つである。3量子遷移を励起したのち、次のパルスで観測可能な-1量子遷移へと直接移すのではなく一度0量子遷移に戻し、最後にCT選択的な90degパルスを照射して-1量子遷移へと移し信号を取り込む。コヒーレンスの移動が対称的になるため、純粋吸収型のスペクトルが得られる。Fig. 2にRbNO387Rb Z-filter MQMASのスペクトルを示す。スペクトルが歪んでおらず、解析しやすくなっている。

Figure 2 | Z-filter MQMASのシーケンス (左) とRbNO3のスペクトル (右)  

Whole Echo MQMAS

Z-filter型のシーケンスを用いる他、Whole Echo 信号を取り込むことによっても線形の歪みのないスペクトルを得ることが可能である (Fig. 3) 。Whole echo MQMASでは+3あるいは-3量子遷移のみをコヒーレンス選択、2つ目のパルスで+1量子遷移へと移し最後にCT選択的な180degパルスを照射することで-1量子遷移へと移しWhole echoとして信号を取り込む。緩和の速い系には不適切であるが、緩和の影響が無視できる系ではZ-filter型のシーケンスを用いた場合の√2倍の感度増強が得られる。RbNO387Rb z-filter MQMASおよびwhole echo MQMASの等方スペクトルの比較をFig. 3に示す。whole echo MQMASではz-filter MQMASより高い感度が得られている。なお、ここでは積算回数が異なるためノイズレベルが異なっている。

Figure 3 | whole-Echo MQMASのシーケンス (左) とRbNO387Rb Z-filterとwhole echo MQMASの等方スペクトルの比較 (右)  

Split t1型のシーケンス

ここまで説明したシーケンスでは、t1展開では多量子遷移のみを用いていた。そのため、得られたデータをそのままフーリエ変換すると信号が斜めに検出され、また縦軸と横軸のスケールがずれてしまう。shearing、scalingと呼ばれるプロセシングを行うことで、解析に適したスペクトルが得られる。Split t1型のシーケンスではt1展開時間を多量子遷移で行う時間と1量子遷移で行う時間に分ける (Fig. 4) 。ここでは𝑅 (FIDの傾きの係数) を用いて3量子遷移でt1×1∕(1+|𝑅|)、1量子遷移でt1×|𝑅|∕(1+|𝑅|)としている。このシーケンスを用いた場合shearing、scalingが不要となり、通常のフーリエ変換をするだけで解析に適したスペクトルが得られる。シーケンスの書き方により、z-filter型あるいはWhole echo型の信号の取り込み方が可能である。得られる情報としては通常のシーケンスとほぼ差がない。

Figure 4 | Split t1型のMQMASシーケンス z-filter型 (左) 、Whole echo型 (右) t1の展開時間の中でコヒーレンスの移動を行う。

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