ようこそ!ちょっと知りたい定量NMR
Issue 1
定量NMRはNMR (核磁気共鳴装置) による定量分析のことです。
qNMR (Quantitative NMR) とも呼ばれています。一般的な定量分析といえば、クロマトグラフ法が思い浮かびます。NMRは原理的に定量性があるのですが、クロマトグラフィに比較すると、「大きい・コストが高い・感度低い・何か難しそう」というイメージ・・・のようです。
しかしNMRによる定量分析は原理的観点から、定量分析の信頼性を向上するカギとして近年様々な分野で注目を浴びています。例えば日本薬局方には定量用標準品の値付け方法としてqNMRが採用されています。これは分析指標成分のクロマトグラフ分析による結果の信頼性を向上させます。標準品の純度確保はできていますか?
NMRでできること
NMRは原子核を直接はかることができ、様々な情報が得られます。定量分析で多く利用されているのは分子の中の水素核 (1H:プロトン )を測定した1H-NMRです。エタノールとメタノールの1H -NMRスペクトルを比較してみてください。NMRではおよそ官能基ごとに信号が分離してでます。検出された信号は形や位置が違います!また更に、信号強度はプロトンの数に比例します。そのため、NMRスペクトルからは測定した化合物を「見分けること」、「はかること」つまり定性と定量分析ができます。
お酒の1H -NMR測定を行ってみました。お酒の主成分は水ですが、スペクトルを見るとエタノールが見られます。そこに、少量のメタノールを加えてみました。メタノールはエタノールと信号が検出される位置が違うので、メタノールを加えると、「あ・・・何か入っている」と、すぐにわかります。そして、エタノールとメタノールのCH3基の積分値を比較すると、エタノールとメタノールの比率がわかります。以上のようにNMRでは分子内及び分子間の定量情報が得られます。