クロマトグラフ法の定量とNMRの定量
Issue 2
NMRではかる
NMRではスペクトル上の信号面積の情報を使って、成分間の比率を求めることを前回紹介しました。これは信号の面積値と水素の数(プロトン数)が比例するというNMRの原理を反映しています。これは核スピンを直接観測しているので、モル濃度を考慮し、分子間においてもこの関係式は成り立ちます。つまり、どちらか一方のモル濃度がわかるとそれを基準にして分析対象成分のモル濃度を測定することができるのです。例えば、メタノールの濃度が10mMだとわかっていると、計算式に代入して、エタノールは62.5mMと算出されます。このように「NMRではかる」というのは比率だけでなく目的成分の含量をはかることができます。
クロマトグラフ法とNMRの定量
<NMRではかる>のところでメタノールからエタノールの定量分析(含量測定)の例をご紹介しましたが、もうお気づきの方がいらっしゃるかもしれません。
定量用基準物質と分析対象成分は同じものでなくても、NMRでは定量分析が可能です。それはNMRが観測しているのは分子の中にある水素(プロトン1H)なので、分子種が異なっていても分子の中に水素があれば定量分析ができてしまいます。
従って、NMRでの定量分析では検量線は必要ありません。
このことは標準品が手に入らない分析試料(新規合成化合物、抽出物など)
に対しても定量分析ができる可能性を示しています。