成分比をはかる、含量をはかる
Issue 4
定量NMRの使い道
定量NMRは分析試料中の注目成分の比率を確認すること、注目成分の絶対量(含量)をはかることができます。
成分比をはかる
高分子や化成品など複数の成分が含まれる分析試料を対象として活用されています。成分比は分離分析として液体クロマトグラフ法でも分析が可能ですが、NMRでの分析では分離分析でないもののその性質を利用した効率的な分析が可能です。分離分析ではないという点は精確な成分比を求めるためには注目成分由来のNMR信号がスペクトル上で分離し、なおかつその信号が単独である(不純物と重ならない)ということが必要条件となります。しかし、条件が整えば、1つの測定条件で複数の成分を効率的に定量することが可能となります。
図はりんごジュースの1H-NMRスペクトルですが、エタノールと糖の信号を確認することができます。りんごジュースの場合、エタノールと糖を別々に観測でき、定性と定量が可能です。このように、条件を変えずに定性と定量を同時にできることは非常に効率的です。
含量をはかる
合成化合物、天然物の様々な目的の原料や試薬を対象として活用されています。定量NMRの大きな特徴は分析対象成分と同一の標準品を必要としないこと。この特徴は新規化合物の定量を行うには非常に役にたちます。そもそも有機化合物の絶対純度を測定する方法は凝固点降下法など非常に精密なもので行われており、実用的に活用することは難しいのですが、NMRでは適切な定量基準物質を用意して様々な有機化合物に対する含量(純度)を測定することが可能です。
NMRは構造解析目的で普及している分析機器です。そういう意味では実用的に有機化合物の含量(純度)を行えます。更に、SI単位の1つであるモルを測定することが可能であり、計量トレーサビリティが確保された定量基準物質を利用して適切な操作手順を行うことにより、得られる結果はSIトレーサブルな分析結果を得ることができます。この理由から、多くの有機化合物の標準物質に定量NMRは活用されています。補足ですが、条件が整えば分析試料内の複数の成分の含量を1つの定量基準物質から求めることも可能です。
皆さんの研究や日常業務の中で定量NMRは生かせそうですか?
図: りんごジュースの1H-NMRスペクトル