定量NMRが定量分析を変える?(1)
Issue 6
汎用性があり、多くの分野で活用している定量分析といえばHPLCやGCなどのクロマトグラフ法です。クロマトグラフ法は医薬品・食品・化学工業製品など様々な分野で品質管理にかかせない分析機器です。
標準品・標準物質の現状
クロマトグラフ法では定量分析の際に測定対象物と同一の標準品あるいは標準物質と呼ばれる「ものさし」が必要です。従って、「ものさし」の品質は非常に重要となります。国家標準物質と呼ばれるものはSIトレーサブルな評価がなされており、このグレードの「ものさし」を使うことでクロマトグラフ法によって得られた結果の信頼性は高いと評価されます。しかし、国家標準物質を製品にするための評価は時間もコストもかかります。従って世の中には数限りない測定対象物質が存在している中、かならずしも分析対象物に対するこのグレードの「ものさし」が存在するとは限りません。
カルミン酸の場合
カルミン酸は天然由来の色素で様々な製品に利用されている有機化合物です。
実際の製品中に含まれるカルミン酸を測定する場合にはHPLCが使用されます。しかし、カルミン酸の国家標準物質は存在しません。そういう場合は市販試薬を定量基準、つまり「ものさし」として使うことになります。実際に複数の試薬会社より試薬として販売されていますので、私たちはこの試薬を使ってHPLCの分析を行うことができます。試薬の品質は表示ラベルや添付されている情報によって私たちは品質を確認することができますが、様々な方法によって評価されています。各試薬メーカで厳密に品質管理されているわけですから、基本的には全く問題がないのですが、こういう場合はどうでしょうか?ある分析試料があって、これを複数の機関でHPLC分析を行う場合。ある機関はAをある機関がBを使って分析したとします。結果はどうなるでしょうか?
実はこの問題、多くの分析者達が気になっていたことなのですが、標準品・標準物質の供給問題にも繋がりなかなか解決は見いだせていませんでした。この問題を解決へ導くのが定量NMRです。