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定量NMRが定量分析を変える?(2)

Issue 7

カルミン酸の問題、どのように解決できるのでしょうか?

解決のヒント

使う標準品によって分析結果が異なる可能性でてくるというカルミン酸の問題ですが、使う標準品の絶対純度がわかれば、結果に補正がかけられるので解決することができます。有機化合物の絶対純度を求める方法は凝固点降下法や滴定法などの一次標準測定法と呼ばれる方法で実施されます。しかしこれらは高精度な分析ができるものの、操作性や物質の性質によっては評価ができないなど、汎用的な方法ではありません。一方、NMRはすでに紹介したように(Issue 4 参照)、純度や濃度の分かっている基準物質を使うことで、測定対象物の純度や濃度を求めることができます。さらに、適切な操作に従うことでSIトレーサブルな純度評価が可能です(Issue 5 参照)。そして装置の普及も進んでいます。つまり、定量NMRによる有機化合物の純度評価は標準品や標準物質の純度評価に適した方法として考えられます。

新しい定量分析の形

ここで、異なる様々なカルミン酸の純度評価を定量NMRで行った結果を示します。(表1)
このようにすべてのカルミン酸試薬に対して絶対含量として純度を求めることができます。この情報があれば、どのカルミン酸試薬をクロマト分析の際の標準品として使ったとしても、補正をかける事ができるので、同じサンプルはどこで誰が測定しても同じ結果を得ることができます。この結果から1つの定量分析の新しい形を提案することができます。(表2)
それは、定量結果が標準物質の品質に依存しない体系です。このような考え方は公定法などで採用され始めており、これからの定量分析の形になることが予想されます。

 

表1

 

表2

カルミン酸の例が教えてくれること

クロマトグラフ法の分析結果に大きな影響を与える標準品の問題点を解決する方法として、定量NMRが活躍することを紹介しました。定量分析結果の信頼性向上に役立てることができるのですが、実は有機化合物の純度を知ることは奥が深いと考えられます。それは、有機化合物の純度を知ることは実はその後の段階の評価に影響があるからです。例えば薬理活性や毒性のあるもの。純度と評価結果の関係はないのでしょうか。また、原料として使われるもの。その後の反応効率との関係はないのでしょうか。そのような視点から考えても有機化合物の純度を知ることは広い活用範囲があると想像できます。そして、それが比較的身近になってきたNMRでできるとしたら・・定量NMRの使い道はどんどん広がっていくでしょう。

ISRD (qNMR Internal Standard Reference Data) の公開

BIPM(国際度量衡局)では、qNMRを利用した標準物質の分析法の研究が進められておりますが、qNMR用標準物質の情報として、マレイン酸のISRDを公開しました。qNMR標準物質として使うための物性評価がまとえられており、標準物質選択に必要な情報です。こちらの情報は順次、このデータはBIPMのHP上で公開される予定となっており、qNMRを実施するための標準物質選択に活用できるでしょう。

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