熱脱離/熱分解DART質量分析および蛍光X線分析によるダクトテープの分析

  • 概要

MSTips No.232 日本電子株式会社 MS事業ユニット

ダクトテープや絶縁テープ等の粘着テープの同定は、犯罪捜査や法科学上、重要である。我々は熱脱離/熱分解DART(Direct Analysis in Real Time)質量分析装置を用いて、異なったメーカー、種類のダクトテープの識別を試みた。また、蛍光X線分析装置を用いて、それぞれのテープの元素分析を行い、相補的な情報も取得した。

実験

-試料-

6種類のダクトテープを質量分析装置、および蛍光X線分析装置で分析した。

Duct tapes analyzed in this study
Fig.1 Duct tapes analyzed in this study.
Table1 List of duct tapes analyzed in this study
List of duct tapes analyzed in this study

―熱脱離/熱分解DART質量分析―

マススペクトルはionRocket 熱脱離/熱分解システム(株式会社バイオクロマト: http://www.bicr.co.jp/product/analysis/ionrocket)とDARTイオン源SVPを装着したJMS-T100LP AccuTOF™ LC-plus 4Gで得た(Fig.2)。
それぞれのテープを小さく(直径約1mm)切断し、ionRocket用銅製使い捨てポット(pot)に入れて測定した。(Fig.3)

The ionRocket thermal desorption/pyrolysis system and DART Ion Source SVP mounted on the AccuTOF LC-plus 4G mass spectrometer Figure
Fig.2 The ionRocket thermal desorption/pyrolysis system and DART Ion Source SVP mounted on the AccuTOF™ LC-plus 4G mass spectrometer.
A copper pot used as a sample holder for the ionRocket
Fig.3 A copper pot used as a sample holder for the ionRocket.

銅製potをionRocketのヒーターブロックに装着し(Fig.4)、DARTイオン源のガス吐出し口とAccuTOF™ LC-plus 4Gのイオン源導入オリフィスとの間に移動させる。試料から発生する熱脱離/熱分解生成物をDARTガスの流れに効率よく導くため、ガラス製T字管を試作して用いた(Fig.5)。
ionRocketのヒーター温度は、室温から600℃まで、100℃/分の昇温速度で加熱した。マススペクトルは、質量分解能10,000、正イオン検出モードで、m/z 50~1000の範囲を、1スペクトル/秒の記録速度で取得した。
 

Fig.4 A sample mounted onto the ionRocket heater block.
A sample mounted on the heater block, positioned below a glass tee.


Fig.5 A sample mounted on the heater block, positioned below a glass tee.

-蛍光X線分析(XRF)-

JSX-1000S ElementEye™卓上型蛍光X線分析装置(Fig.6)を用い、Quick and Easy Organic Analysis – Vacuum solutionモードで測定した。シリコン、アルミニウムなどの軽元素の検出感度を向上させるために、真空中での測定を選択した。測定時間は1試料あたり60秒で、コリメータの設定は9mmとした。

“Element Eye” benchtop x-ray fluorescence spectrometer
Fig.6 “ElementEye™” benchtop x-ray fluorescence spectrometer.

結果

-熱脱離/熱分解DART質量分析-

各テープ試料について、ポリマー添加剤、天然ゴム系接着剤、熱分解生成物などがそれぞれ異なる温度で、かつ再現性よく検出された。(Fig.7)
Temperature dependence and mass spectra for selected components
Fig.7 Temperature dependence and mass spectra for selected components.
 

いくつかの化合物(例:アビエチン酸 abietic acid)の熱脱離プロファイルはテープ試料間で異なることがわかり、この再現性も確認された。(Fig.8)

Thermal desorption profiles for abietic acid in different tapes.
Fig.8 Thermal desorption profiles for abietic acid in different tapes.

Brand Aの2種類のテープ(Brand A-1 (gray) とBrand A-2 (black))は、熱脱離プロファイル上では殆ど同じだったが、m/z 247.17のピーク(元素組成:[C16H22O2+H]+)はBrand A-1 (gray) にのみ顕著に検出され、Brand A-2 (black) からは検出されなかったため、これら2種類も明確に識別することができた。 (Fig.9)

Thermal desorption profiles for peak of m/z 247.17 in same bland tapes.
Fig.9 Thermal desorption profiles for peak of m/z 247.17 in same bland tapes.

-蛍光X線分析-

蛍光X線分析により、各テープ試料の元素組成の差異を知ることができる。灰色(gray)のテープはすべて顕著な量のアルミニウムを含んでおり、同様に白い(white)テープは顕著な量のチタンを含んでいた。白色顔料として酸化チタンが使われることが知られていることから、白いテープのチタンは TiO2 に由来するものを予想される。このように、これらの無機化合物の含有量はテープの着色に使用された顔料に由来することが推察される。6種類のテープの分析結果をTable2に示す。

Table2. Summary of XRF analysis of six duct tapes.
Summary of XRF analysis of six duct tapes.

まとめ

バイオクロマト社製ionRocket 熱脱離/熱分解システムとDARTイオン源SVPを装着したJMS-T100LP AccuTOF™ LC-plus 4Gで測定したマススペクトルと熱脱離プロファイルは、6種類のテープ試料の差異を明確に、かつ再現性よく示した。JSX-1000S ElementEye™から得られた蛍光X線データも各テープ試料の差異を明確に示し、この差異がテープの着色に使用される無機顔料に由来することが示唆された。

このページの印刷用PDFはこちら
クリックすると別ウィンドウが開きます。

PDF 1.02MB

関連製品 RELATED PRODUCT