GC-MS/MSによる食品中残留農薬の定量分析における安定性 -ほうれん草抽出液中農薬の安定性検証- [GC-TQMS application]
MSTips No.262
今日『食の安全』は世界的な規模で取り組むべき重要な課題であり、各国においては食品中残留農薬の基準値を設定し、独自の残留農薬規制を策定している。日本では平成18年5月末日にポジティブリスト制が施行されたが、人の健康を損なう恐れのない量、いわゆる一律基準としては10ppbが採用されている。ポジティブリスト制により測定対象農薬数は増え、食品中の残留農薬を精度良く、且つ一斉に分析可能な手法が求められている。質量分析計(MS)は検出感度が高い特長を有しているが、その中でも特に感度と選択性に優れたMS/MS法が農薬分析の主流となりつつある。
JMS-TQ4000GCはMS/MSのコリジョンセルに独自のイオン蓄積/排出機構を備え、また新規開発したファームウェアにより最大36,000トランジションによるMS/MS測定が可能な最新のGC-MS/MSである。今回、ほうれん草抽出液に添加した農薬8成分の安定性について検証したので報告する。
測定条件
測定試料はほうれん草15gをAOAC法で処理して得た抽出液と農薬標準溶液100ppbを9:1で混合したものを用いた。今回使用した測定条件をTable1に示す。
GC-MS/MS, JMS-TQ4000GC
Table1 Measurement condition
[GC-TQMS condition]
System | JMS-TQ4000GC (JEOL) |
Ionization mode | EI+: 70eV, 50µA |
GC column | VF-5ms, 30m × 0.25mm, 0.25µm |
Oven temp. | 50°C (1min) → 25°C/min → 125°C → 10°C/min → 300°C |
Inlet temp. | 250°C |
Inlet mode | Splitless, 2µL |
He flow | 1.0mL/min (Constant Flow) |
MS/MS mode | Peak Dependent SRM |
結果
ほうれん草抽出液に添加した農薬8成分(10ppb)のSRMクロマトグラムピーク面積の再現性(n=50)をFig.1に、また50データのSRMクロマトグラムを重ね書きしたものをFig.2に示す。実試料50回連続測定においても各農薬の面積値の再現性はCV10%以下であり、安定して測定結果が得られることが確認できた。MS/MS法においても安定した測定結果が得られており、JMS-TQ4000GCが農薬の定量分析に有効であることを確認した。
Compound | SRM peak area ave. | CV (%) |
---|---|---|
Fenarimol | 1168018 | 1.7 |
Oxadiazon | 1047475 | 7.1 |
Difenoconazole 1 | 2558083 | 3.4 |
Difenoconazole 2 | 3047319 | 3.2 |
Etofenprox | 5045185 | 1.9 |
Fenothiocarb | 938218 | 4.3 |
Dicofol | 1247254 | 4.6 |
Picolinafen | 1547959 | 3.8 |
Fig.1 SRM chromatogram peak area Reproducibility for the 8 pesticides in spinach extract solution
Fig.2 Overwriting for the 50 SRM chromatograms in spinach extract solution
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