GC-QMS Application: GC-MS/MSを利用した食品中の2-MIBによるオフフレーバー分析 ~人の嗅覚閾値レベルまでの事例紹介~

  • 概要

MSTips No.309

概要

近年、相次いだ食品事故によって、食品の安全性に対する社会的な関心はますます高まっている。食品の安全性を損なう事例は様々報告されているが、その発覚の端緒として、異臭(オフフレーバーとも呼称される)によるクレームがあげられる。異臭クレームに対しては、原因となる物質の特定が重要となるが、その作業には一般的に機器分析と人間の嗅覚による官能評価を組み合わせたアプローチが取られる。しかし、異臭クレームの原因物質は、極めて微量であり、加えて人の嗅覚は時として機器分析が検出できない極微量の存在を感じとることも可能なため、異臭分析においては機器分析側に高い検出能力が求められている。

異臭分析における機器分析においては、揮発成分の分析を得手とするGC-MSを用いることが一般的であるが、食品のような高いマトリックスが想定されるサンプルにおいては、夾雑成分との分離が不十分となるケースも想定
される。今回、GC-MSより、高い感度と選択性を有するGC-MS/MSを用いて、食品中のカビ臭気を人の嗅覚閾値レベルで分析した事例を紹介する。

ガスクロマトグラフ三連四重極質量分析計(GC-MS/MS)JMS-TQ4000GC
ガスクロマトグラフ三連四重極質量分析計
(GC-MS/MS)
JMS-TQ4000GC

実験

サンプルは、豆類食品A,B,Cで、これらのサンプルは何れも官能評価においてカビ臭気が確認されており、臭いの強さはAとBはほぼ同じでCが一番強いという結果になっている。今回、GC-MS/MSで測定するにあたっては、各サンプル10gに水200mLを加えて減圧蒸留し、留分を50mLのエーテルで液-液抽出し、抽出液を窒素吹付けで0.2mLに濃縮した溶液を検液とした。これらのサンプルに加えて、定量値の算出を目的として調製した10ng/mLの標準溶液を測定に供した。測定は、カビ臭気原因物質として知られている2-Methylisoborneol(→2-MIB)とGeosminを対象とし、Table1に示した条件下で実施した。測定は、夾雑成分との分離と高感度検出を目的としてSRMモードを使用した。また、通常のGC-MSとの比較として、GC-MS/MSにおけるシングルモードを利用してSIMモードでの測定も実施した。

Table1 Measurement condition

System JMS-TQ4000GC (JEOL Ltd.)
Ionization mode EI+: 70eV, 50μA
GC column VF-5ms, 30m x 0.25mm, 0.25μm
Oven temp. 50°C(1min) → 280°C (15°C/min, 0min)
Inlet temp. 250°C
Inlet mode Splitless, 1μL
He flow 1.0mL/min (Constant Flow)
>Measurement mode SRM
SRM transitions 2-MIB: m/z 108→93(C.E.=10eV), m/z 150→135(C.E.=10eV)
Geosmin: m/z 112→83(C.E.=10eV), m/z 112→97(C.E.=10eV)

結果

SRMとSIMの比較

各サンプルと標準溶液を測定した際の2-MIB及びGeosminのSRMクロマトグラムをFigure1及び2に示した。2-MIBはGeosminに比べてピーク強度が低く、加えてモニターイオンの質量が低いため、通常のGC-MSによる測定では検出が困難な成分であるが、今回GC-MS/MSで測定した結果ではサンプルA,B,Cの何れからも十分な強度でピークが確認出来ている。参考までにGC-MS/MSのシングルMSモードで測定した際の2-MIBのSIMクロマトグラムをFigure3に示した。SIMの測定結果では、2-MIBはベースに埋もれてしまっており、全く検出出来ていない事がわかる。

Figure1  SRM chromatograms of 2-MIB at each sample.

Figure1 SRM chromatograms of 2-MIB at each sample.

Figure2  SRM chromatogram of Geosmin at each sample.

Figure2 SRM chromatogram of Geosmin at each sample.

Figure3 SIM chromatograms of 2-MIB at each sample.

機器分析結果官能試験との相関について

標準試料の結果から算出した各サンプルの2-MIB及びGeosminの定量値をTable2に示した。定量値は、2-MIBとGeosmin共にAとBがほぼ同等でCが一番高いという結果となった。この結果は、先に示した官能評価と一致していることから、妥当な結果と言える。

Table2 Quantitative value of each sample

A B C
2-MIB Concentration in test solution (ng/mL) 3.1 3.6 6.4
Concentration in Sample (ppb) 0.062 0.072 0.128
Geosmin Concentration in test solution (ng/mL) 20.7 25.0 62.3
Concentration in Sample (ppb) 0.414 0.500 1.246

謝辞

本MSTips作成にあたり、試料を提供して頂いた大和サービス株式会社、においテクニカルセンター(NTC)センター長の加藤 寛之様に感謝致します。

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