名古屋市立緑市民病院(愛知)
迅速な報告、試薬コスト低減図る ~「BioMajesty™ ZERO JCA-ZS050」を2台導入~
名古屋市立緑市民病院(名古屋市、稼動250床)は、地域に密着した医療を実施している。臨床検査科は、品質の高い検査データをより迅速、低コストに診療側に提供している。
昨年9月、生化学自動分析装置「BioMajesty™ ZERO JCA-ZS050」を2台導入し、これまで以上に迅速な報告が可能になるとともに、試薬コストの一層の低減を図った。
BMシリーズは、独自のパラメーターとしてサブ項目測定機能を持つ。今後、施設のニーズに合った機器の詳細な設定を行い、さらに使い込んでいく方針。
病院概要
同病院は、患者に選ばれる病院を目指して地域密着の医療を進めている。2012年4月に医療法人による指定管理者制度が導入され、その後、24時間いつでも救急患者を受け入れるなどの体制を整備。1次、2次救急医療や小児医療、がん治療のほか、地域包括ケア病棟を備え、一般急性期から回復期、さらに在宅復帰に向けた後方支援病院としての役割も担う。
指定管理者制度導入時は100床でスタートしたが、患者数の増加に伴い現在は205床(うち地域包括ケア病棟105床)に増床。今後も診療機能を強化する予定で、病床数がさらに増えることが見込まれる。
検体検査は全て迅速扱い
祖父江科長(左)と伊藤部長
診療技術部の伊藤淳治部長は、臨床検査科の特徴について「院内で行う検査を充実させ、全て迅速扱いで診療側に報告している」と説明する。検体検査は検体到着後30分以内をめどに報告するという。また、チーム医療を積極的に進めており、診療技術部の各部門が連携し、経営意識を持ちながら業務に当たっていると話す。
救急車からの要請は断らない運用としていることから、5年前に比べ救急患者は月20件程度から100件程度に増加した。これにより地域住民からの信頼も高まり、「市立病院時代に比べ職員は生き生きと働いている」(伊藤氏)という。
チーム医療について臨床検査科の祖父江富由貴科長は、「若い検査技師にも院内のさまざまな委員会に出席させ、積極的に他職種との意見交換を行っている」と述べる。検査技師は病院経営にも参画しているという。
検体検査室の皆さん(左から3人目は神谷前院長)
臨床検査科のメンバーは6人(伊藤部長は除く)。検体検査は1日平均250 ~ 300件。ほかに生理、病理、輸血の各検査を行い、夜間はオンコールで対応している。
祖父江科長は、人材育成に力を入れていることも指摘する。検査領域ごとに担当者を決めているが、誰もが全ての検査が行えるようにトレーニングしている。
伊藤部長は、「検査技師として、検査全般を行える技術を身に付けるとともに、そのうちの一つは専門的な領域となるように指導している」と述べ、学会参加を奨励し、参加費や出張旅費などは病院が負担するなどスキルアップを奨励している。
決め手は試薬コストの低減
病院の構造上の理由から生化学、免疫検査は、別々の部屋で行われている。導入したJCA-ZS050は生化学室に2台並行して設置され、どちらの機器も同じ項目の試薬を載せ、24時間交互に運用する。試薬や消耗品を共通にすることで、管理面の負担軽減を図ったという。前機種は導入から15年間が経過し、更新時期を迎えていた。試薬単価を上げないことを条件に検討した結果、2社の機種を候補として選定した。
最終的にJCA-ZS050にしたのは、試薬使用量の大幅削減を通じてより試薬コストの低減が見込めると判断したため。JCA-ZS050の最少反応液量は40μLで、前機種の約3分の1以下。もう1社の機種と比べても試薬量は約半分で済む。診療報酬点数を基に機器の償却を計算すると1年程度で賄える計算となった。試薬コストの低減効果は、機器更新について病院上層部を説得する際に大きな材料になったという。
JACLaS EXPO 2015でJCA-ZS050を初めて見た際、「斬新なデザインで、高級感がある」印象だったと祖父江科長は振り返る。実際に使ってみると、試薬コストが一層低減されるとともに各機能が改善され、他社製の機器に比べて非常に使いやすいとの印象だ。以前、国立病院に勤務していたことから、施設の異動に伴い、ほぼ全メーカーの生化学自動分析装置を使った経験を持つ。
JCA-ZS050の処理能力は、前機種とは同程度。前機種では、試薬の使用効率化を考え、2台の機器に分散させて試薬項目を載せていた。このため検体によっては2つの機器で測定することになり、検体が多い時間帯にはたびたび渋滞が発生し、報告の遅延につながった。
JCA-ZS050では、試薬コストが低減するため、設置した2台に全項目の試薬を載せた。検体は1台の機器で運用でき、その結果、渋滞もなく、従来よりも早く報告できるようになった。全項目を2台に載せてもトータルのコストは以前より低くなったと祖父江科長は言う。
安全性向上と簡便なメンテナンス
JCA-ZS050の特徴について祖父江科長は、「プローブの安全性向上と簡便なメンテナンス」を挙げた。前者は、溝に沿ってプローブが移動するためプローブの下に手が入らない。このため手にプローブが刺さるといった心配がなく、試薬の飛散もないという。メンテナンスは、特に定期的に交換が必要なシール材や光源ランプの交換が、工具を使うことなく簡便にできるようになったという。交換業務は、本体のモニターで動画を見ながら作業ができる。
シール材の交換は定期的に行うが、メンテナンス代を抑える施設では、メーカーに依頼せず自施設で行うことがある。従来の機器では、締め付けが不良の場合、データの質が落ちることがあり、注意を要していた。また、JCA-ZS050の光源ランプ交換は、作業中に自動的に機器の電源がオフになったり、光源ランプが安定するまでカウントダウンが行われるなど、使用者本位の設計となっている。
洗剤は、以前の機器は何種類か使用され、別々に投入口があった。これに対してJCA-ZS050は洗剤を1種類に集約、投入口も1カ所になり、洗剤切れを起こす心配が低減した。
JCA-ZS050の導入に当たり臨床検査科は、検体間でキャリーオーバーが出ていないかを確認した。日常の検査ではほぼ遭遇することのないHBs抗原が20万IU/mL以上の極めて高い濃度の検体を用いた。検討結果について祖父江科長は、現在、仮テスト段階とした上で、「結果は非常に良好で、日常の検査ではまったく影響がない」と述べた。これにより生化学用の検体を免疫検査にも使えることから、分注の手間、採血管のコストを含めて浮かせることができるとした。今後、さらに検討を進めてみたいという。
使い込んでこそ…
祖父江科長は、「生化学検査は機器の精度が上がり、誰が使っても一定の値が出せる。このため若い技師の中には、データを出すだけで機器に使われていると考え敬遠することがある」と指摘する。しかし、自分がデータを出すというのは、どういう意味か考えてほしいと述べる。ルーチン検査の中で、あれっと思うような変わったデータが出ることがある。その際、部長や科長の指導を受けて、患者のカルテを参照したり、文献を調べるという。他の項目との組み合わせにより再検が必要かどうかの判断にもつながる。検査値から考えられる疾病について診療側に報告することもあるという。
BMシリーズは、使用者側がさわることができる部分が他機種と比べ多いため、施設に応じた運用をできることが魅力であると語る。祖父江科長は、BMシリーズの魅力が生むさまざまな視点から「気付き」が得られることを期待する。今後、施設に合った設定を行い、検査データを通して診療側に貢献していきたい考えだ。
- THE MEDICAL & TEST JOURNAL 第1390号掲載(2017年6月1日)
