ASEAN地域の溶接・接合技術の発展に取り組む接合科学研究所 HUST-UOsaka
電子顕微鏡を活用した材料評価と人材育成
ハノイ工科大学機械工学部と大阪大学接合科学研究所(JWRI)が連携して設立した接合科学研究所HUST-UOsakaは、ベトナム国内及び同地域における溶接・接合分野の研究と教育に取り組んでいます。
接合科学研究所HUST-UOsakaでは、プラズマ溶接、レーザ溶接、摩擦攪拌接合(FSW)などの各種溶接プロセスを対象に、溶接部の物理評価や組織観察、金属変態に関する研究を進めています。また、ASEAN地域における技術者育成や技術開発にも取り組んでおり、産学が連携しながら研究と教育を推進しています。
ベトナム溶接研究会の様子
溶接・接合技術の研究では、接合部で生じる微細組織の変化を理解することが重要です。その研究を支えている装置の一つが、日本電子の電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)「JSM-IT800」です。
本稿では、接合科学研究所HUST-UOsakaにおける材料評価への取り組みと、JSM-IT800の活用についてご紹介します。
HUST実機(JSM-IT800)ライブデモの様子
Dr. Han Le DUY, Vice Director 接合科学研究所 HUST-UOsaka
溶接・接合研究の基盤となる材料評価
接合科学研究所HUST-UOsakaでは、溶接・接合によって生じる組織変化と材料特性の関係を理解するため、さまざまな材料評価を行っています。
溶接・接合研究では、単に接合部の強度を評価するだけではなく、「プロセス」「組織」「特性」「性能」の関係を総合的に把握することが求められます。
特に、熱影響部(HAZ)を含む溶接部の微細組織は、最終的な材料特性に大きな影響を与えます。そのため接合科学研究所HUST-UOsakaでは、SEMを活用した組織観察や分析を重要な研究テーマの一つとして位置付けています。
「溶接・接合研究において、材料評価は基盤的かつ中核的な位置付けを占めています。」
微細組織から溶接現象を読み解く
接合科学研究所HUST-UOsakaでは、主に金属微細組織観察のためにSEMを活用しています。
溶接継手を評価する際には、結晶粒径や結晶方位、ひずみなどの情報が重要となるため、EBSDによる結晶方位解析を行っています。
また、材料中の元素分布が機械的特性に影響を与える場合には、EDSによる元素マッピングを行い、微細組織やひずみ分布との関係を評価しています。
「EBSDにて結晶方位解析を行い、EDSによる元素マップと見比べながら、微細組織やひずみ分布の発生理由を考察しています。」
SEM、EBSD、EDSによって得られる情報を組み合わせることで、接合科学研究所HUST-UOsakaは複雑な溶接組織の形成メカニズムの理解に取り組んでいます。
複雑な溶接組織をより深く理解するために
接合科学研究所HUST-UOsakaでは、日本電子のFE-SEM「JSM-IT800」を活用して、溶接部の組織観察や元素分析、結晶方位解析を行っています。
「JSM-IT800の導入により、業務が大幅に簡素化・効率化されました。以前使用していた装置と比べて、より鮮明な画像、安定した性能、そして迅速な分析を実現しています。」
接合科学研究所HUST-UOsakaでは、溶接プロセスによって形成される微細組織と材料特性の関係を理解することを目的として評価を進めています。
JSM-IT800の導入後は、より微細な組織観察や高品質なEBSDデータの取得が可能となり、複雑な溶接組織をこれまで以上に詳細に解析できるようになりました。
「溶接プロセス、微細組織、そして材料特性の間の関係をより深く理解できるようになりました。」
研究者にとって重要なのは、単に観察や分析ができることではありません。得られたデータを通じて、溶接現象の本質に迫り、材料特性との関係を理解することです。JSM-IT800は、そのための研究基盤として活用されています。
研究を支える高品質な解析データ
接合科学研究所HUST-UOsakaがJSM-IT800の導入効果として挙げるのが、取得データの品質向上です。
「最大の改善点はデータ品質です。より微細な組織を観察し、精度の高い元素マッピングや高品質なEBSDデータを取得できるようになりました。」
JSM-IT800の導入により、接合科学研究所HUST-UOsakaでは、これまで以上に詳細な微細組織観察とEBSD解析が可能になりました。
これにより、複雑な溶接組織をより正確に解析することが可能となり、研究結果に対する確信も高まりました。
研究だけでなく人材育成にも活用
接合科学研究所HUST-UOsakaでは、JSM-IT800を研究だけでなく教育にも活用しています。
学生はJSM-IT800を用いたSEM観察やEBSD解析を通じて、材料評価の手法やデータ解析の考え方を学んでいます。
「学生は高度なSEMやEBSD装置を使用し、実際の研究データを解析する手法を学ぶ機会を得ています。」
また、JSM-IT800は接合科学研究所HUST-UOsakaだけで利用されているわけではありません。化学、材料科学、冶金学などの研究グループとも共有されており、多くの研究者や大学院生が共同研究で活用しています。
研究活動を支える分析装置であると同時に、次世代の研究者・技術者を育成する教育設備としても重要な役割を果たしています。
継続的な研究活動を支えるJEOLのサポート
接合科学研究所HUST-UOsakaでは、JSM-IT800の運用において日本電子のサポートを活用しています。
「頻繁に足を運んでいただいており、距離を感じないサポートを頂戴しています。また、観察会の開催においてもご支援いただき、技術的なサポートのみならず、装置を利用したイベントの計画などにもご協力いただいています。」
技術サポートに加え、装置活用のための活動支援も行われており、継続的な研究活動を支える環境づくりにつながっています。
研究現場では、装置性能だけでなく、安定した運用を支えるサポート体制も重要な要素の一つとなっています。
研究と教育の両面から溶接・接合技術の発展へ
新しい材料や高度な製造技術の研究が進む中で、微細構造解析の重要性は今後さらに高まっていくと考えられています。
「SEMやEBSDは、加工、微細組織、結晶構造、欠陥、そして材料特性の間の関係を理解する上で役立ちます。また、これらはシミュレーション、デジタル材料研究、AIを活用した材料開発のための貴重なデータも提供します。」
接合科学研究所HUST-UOsakaでは、JSM-IT800を活用しながら、溶接・接合分野の研究を進めるとともに、技術者育成や技術開発を通じて地域における溶接・接合技術の発展に取り組んでいます。
ベトナム溶接研究会事務局
大阪大学接合科学研究所ベトナム事務所(ハノイ工科大学内「JWRIハブ拠点」)
| 住所 | No.3, Ngo 15, Ta Quang Buu Street, Bach Khoa, Bach Mai, Hanoi |
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| katsumata.mihoko.jwri#osaka-u.ac.jp (送信される場合は#を@に変更してください) |
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| 担当 | 勝又 美穂子(大阪大学接合科学研究所 准教授) Dr. Han Le Duy(ハノイ工科大学講師、接合科学研究所HUST-UOsaka副所長) |
