クライオ電子顕微鏡
クライオ電子顕微鏡 (Cryo Electron Microscope:クライオ電顕) は、急速凍結した試料を凍結状態のまま観察することができるクライオ専用の透過電子顕微鏡です。精製したタンパク質やウイルスを非晶質氷薄膜に包埋することにより、溶液中の分子形態に近い状態で観察することができるため、近年のライフサイエンス研究、特に構造生物学や創薬分野において重要な解析手法として広く活用されています。
製品一覧
クライオ電子顕微鏡の解析手法
クライオ電子顕微鏡は、多様な解析手法により幅広い研究ニーズに対応します。研究目的や試料の特性に応じて、最適な解析アプローチを選択できます。
単粒子構造解析 (SPA:Single Particle Analysis)
単粒子解析は、氷薄膜中に分散した粒子を大量に撮影し、画像解析によってその三次元構造を解析する手法です。
極めて少量のサンプルでの解析が可能であり、試料の結晶化も不要であるため、結晶化が困難な膜タンパク質や巨大複合体の構造解析に有効です。
データご提供:大阪大学 藤田 順三先生
GroELは、大腸菌由来の14サブユニットから構成されるシャペロニン複合体であり、高い対称性と構造安定性を持つため、クライオ電子顕微鏡の単粒子解析におけるベンチマーク試料として広く利用されています。
左の図は504枚の電子顕微鏡画像から達成された分解能1.98 ÅGroEL の密度マップです。少ない画像枚数からでもアミノ酸側鎖が明瞭に確認できました。
データご提供:理化学研究所 放射光科学研究センター 米倉功治先生
右の図はAcaryochloris marinaから精製された光化学I の密度マップです (分解能2.5 Å)。11サブユニットからなる反応中心複合体として構築されています。
このマップから既知のType I 反応中心 (クロロフィル a 主体) とは異なる構造が明らかとなりました。
クライオ電子線トモグラフィー (Cryo-ET)
クライオ電子線トモグラフィーは、急速凍結した試料を連続的に傾斜させて撮影した多数の投影像をコンピュータで画像処理し、三次元的内部構造を再構成する手法です。オルガネラやウイルスをin situで観察できる点が特長です。
リポソーム製剤内部で形成されるドキソルビシン硫酸塩のナノ結晶の三次元構造をクライオ電子線トモグラフィーで明らかにしました。左図はトモグラムスライスの一部、右図はトモグラムから作製したセグメンテーションになります。繊維状の結晶がリポソーム内で束を形成していることがわかります。
データご提供:産業技術総合研究所 片山 泰樹先生
新しい門に分類される新種の細菌Atribacter laminatus の三次元構造をクライオ電子線トモグラフィーで明らかにしました。本菌は独立した3 つの膜を持つことが確認され、DNA を生体膜で囲うという原核生物には無い特徴を持つことが示唆されました。左図はトモグラムスライスの一部、右図はトモグラムから作製したセグメンテーションになります。
データご提供:産業技術総合研究所 片山 泰樹先生
電子線結晶構造解析 (MicroED)
電子線結晶構造解析 (Microcrystal Electron Diffraction:MicroED)
は、ナノメートル〜サブミクロンサイズの微小結晶から回折データを取得し、高分解能な結晶構造を決定する解析手法です。X線結晶構造解析では十分な大きさの結晶が得られない試料に対しても適用できることから、近年ライフサイエンス分野で注目を集めています。クライオ電子顕微鏡を用いたMicroEDでは、試料を凍結状態で保持したまま電子線を照射し、結晶から得られる電子線回折パターンを解析します。電子線はX線と比べて物質との相互作用が強いため、極めて小さな結晶からでも高品質な回折データを取得できる点が特長です。MicroEDは、タンパク質やペプチド、低分子化合物など、結晶化は可能だがサイズが小さい試料の構造解析に適しており、創薬研究や化合物同定、多形解析などに活用されています。
また、クライオ電子顕微鏡による観察と組み合わせることで、結晶状態の評価から構造決定までを一貫して行うことが可能です。JEOLのクライオ電子顕微鏡は、電子線回折測定に求められる安定した電子光学性能を備えており、MicroEDによる結晶構造解析を強力にサポートします。
アプリケーション
クライオ電子顕微鏡は、基礎研究から産業応用まで幅広い分野で活用されています。各分野における具体的なアプリケーション事例をご紹介します。
導入事例 / インタビュー
変化する分子構造を凍結して見せる クライオ電子顕微鏡が生命の神秘を解き明かす
クライオ電子顕微鏡
大阪大学大学院生命機能研究科
難波啓一 教授
生物の体を構成し、思考や動作の働きの元となるタンパク質。その優れたメカニズムに魅せられた大阪大学の難波啓一教授は、立体構造からその秘密を解き明かそうという挑戦を続けている。
タンパク質の3D構造を超高速で解析 ―クライオEM向け試料作りを10分で―
クライオ電子顕微鏡
大阪大学大学院薬学研究科
生体構造機能分析分野
井上 豪 教授
生命化学や創薬の研究ではタンパク質など生体分子の三次元構造が欠かせない情報になってきた。クライオ電子顕微鏡を用いた解析手法が普及するなか、その作業スピードを劇的に速めるツール「EG-grid™」を開発した井上教授にその特徴を聞いた。
クライオ電子顕微鏡の挑戦的活用 〜ソフトマテリアルへの新展開〜
クライオ電子顕微鏡
国立大学法人筑波大学
生存ダイナミクス研究センター
原田 彩佳 助教
クライオ電子顕微鏡の普及により、生体分子にとどまらずソフトマテリアル分野への応用が注目を集めている。筑波大学生存ダイナミクス研究センター (TARA) では、化粧品材料や毛髪、油脂など水分を含む試料を"ありのまま"の状態で観察できる特長を活かし、新たな構造解析の可能性を切り拓いてきた。試料調製や解析の高度化、画像解析の自動化に取り組むとともに、学外連携を通じて観察基盤の拡充を進めている。こうした挑戦により広がるクライオ電子顕微鏡の応用領域と、ソフトマテリアル研究への展望について、原田彩佳助教に聞いた。
関連製品
Life Science Note
ライフサイエンス分野の観察・解析に貢献するJEOLの装置、測定データを1冊にまとめました。
目次
ライフサイエンス分野の観察・解析に貢献するJEOLの装置
- 透過電子顕微鏡【JEM-3300 CRYO ARM™ 300 II】
- 透過電子顕微鏡【JEM-120i】
- 極微小単結晶構造解析【XtaLAB Synergy-ED】
- 集束イオンビーム加工観察装置【JIB-PS500i / CryoLameller】
- 走査電子顕微鏡【JSM-IT810】
- 核磁気共鳴装置【JNM-ECZL (ECZ Luminous™) シリーズ】
- 質量分析計【JMS-S3000 NewSpiralTOF™】
- 質量分析計【JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-Alpha 2.0】
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TECHNOLOGY / CASE STUDY お客様紹介 / 開発秘話
インタビュー、導入事例、開発秘話の形式で、ユーザーの皆様からいただいた声をご紹介します。現在の課題について解決のヒントが得られるかもしれません。ぜひ、ご覧ください。
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