ユーロフィン日本総研株式会社
「圧巻のSEM15台」がアスベスト分析の未来を切り拓く
1フロアに同じ走査電子顕微鏡 (SEM) が15台並んでいます。弊社社員でも「見たことがない光景だ」と思わず声を上げます。
ユーロフィン日本総研 (静岡県浜松市) は環境調査・測定・分析サービスを提供しており、アスベスト分析業界トップクラスの会社です。15台のSEMは分析ラインの一端を担っています。
分析走査電子顕微鏡 JSM-IT200が同じ箇所に並ぶ
ユーロフィン日本総研株式会社
- 設立:1971年11月8日
- 従業員数:176名
- ISO/IEC 17025試験所認定
技術スタッフ
- 建築物石綿含有建材調査者(特定および一般)
- アスベスト診断士
- 工作物石綿事前調査者
- 石綿作業主任者
- 石綿分析技術評価事業Aランクまたは合格
- 環境計量士
- 作業環境測定士(第1種、第2種)
- 第2種放射線取扱主任者
※2025年12月時点
アスベスト分析依頼が急増
アスベストは、熱に強く燃えにくい、音を吸収する、熱を遮断する、電気を通さないといった特性を持ち、さらに細くしなやかで加工しやすいことから、かつて「夢の素材」と呼ばれ、日本では建築材料として広く使われてきました。
しかし、国土交通省の推計によると、アスベストを含む可能性のある建材を使用した鉄骨造や鉄筋コンクリート造の民間建築物の解体工事は、今後増え続け、2028年頃にピークを迎えると見込まれています。
解体工事に伴い、飛散したアスベスト繊維によって健康被害を招く恐れがあるために、厚生労働省と環境省は、一定規模以上の建物や特定の工作物を解体・改修する際には、アスベストが含まれているかどうかを事前に調査し、その結果を電子システムで報告することを義務付けました。この制度は2022年4月1日から始まっています。
こうした法制度の導入により、建物にアスベストが含まれているかどうかを確認するための分析調査が急増したという経緯があります。
石塚 健博 氏 (浜松技術分析グループ 評価・報告チーム マネージャー)
より信頼性の高い分析のために
日本における、建材中のアスベスト分析は、石綿則に基づく事前調査のアスベスト分析マニュアル 【第2版】(厚労省)より、国内法であるJIS A
1481-1または-2を用いてアスベストの含有の有無を調べています。(定性分析)
JIS A 1481-1では実体顕微鏡(STEREO)と偏光顕微鏡(PLM)を使用し、JIS A 1481-2ではX線回折装置(XRD)と位相差顕微鏡(PCM)を使用します。
ユーロフィン日本総研では、これらの分析手法に加え、走査型電子顕微鏡(SEM)を活用し、分析結果の確定精度向上に努めています。さらに、アスベスト分析法委員会認定 JEMCA インストラクター(一般社団法人
日本環境測定分析協会)が複数名在籍しており、日本国内におけるアスベスト分析技術の向上に積極的に貢献しています。
効率的かつ信頼性の高い『建材アスベスト分析』の流れ
まず動体視力を鍛えました
SEMを使った分析の様子を見学させてもらいました。試料を置いたステージが止まることなく動き続けています。
手元はジョイスティックを常に操作し、画面に映し出される視野は左から右に移動する。一段下がった後に今度は右から左、さらに一段下がって左から右...とジグザグに移動し、試料を隈なくスキャンしていきます。目は移動する画面を追い、気になる物体が行き過ぎようとするとすぐ元の視野に戻して詳細にチェックするのです。
Zeromag ※1、Live Analysis ※2といった機能をフル活用して、迅速な視野移動でアスベストを探していきます。
- ホルダーグラフィックや光学像とSEM像が連動する機能です。複数の試料をホルダーにセットした場合や特定箇所を観察する場合の視野探しが容易になります。
- 観察しながら常に特性X線スペクトルや元素マップを表示する機能です。アスベストと思われる繊維を見つけたら画像を拡大するだけで、その繊維の組成からアスベストであるかの判断を確実に効率よく行えます。
Live Analysisでのアスベスト分析
その視野移動と分析担当者の反応の速さに驚かされました。移動速度はデフォルト設定の2倍に設定しています。
「この部署に配属されたとき、まず動体視力を鍛えました」とは村瀬 真梨香 氏 (浜松技術分析グループ SEMチーム テクニカル・マネージャー) の言葉。
「アスベストがあると分かっている検体なのになかなかSEMで見つけられないときは一層、目に力が入ります」宇宿 洋二 氏 (浜松技術分析グループ SEMチーム テクニカル・マネージャー) の言葉。
ベテランが目視でチェックすることで速く確実に検知できるのだそうです。
写真左:宇宿 洋二 氏 (浜松技術分析グループ SEMチーム テクニカル・マネージャー)
写真右:村瀬 真梨香 氏 (浜松技術分析グループ SEMチーム テクニカル・マネージャー)
SEMは全て元素分析が可能なEDS (エネルギー分散型X線分析装置) を搭載した「JSM-IT200 InTouchScope™」です。
最初にJSM-IT200を導入した理由は使い勝手の良さだったといいます。その後、増設する機会に、いわゆる卓上型のSEMも検討したそうですが「操作性を重視して結局同じ機種にしました」(石塚氏)。操作性がよいので電子顕微鏡を知らない人でも2、3日で操作を覚えられます。また、同じ機種だと新人教育が楽だというメリットもありました。グループ内のだれもが指導員になれるからです。
ハードな使用に耐える装置と万全のサービス体制を
大石 亜衣 氏 (事業推進グループ マネージャー)はアスベスト分析の需要ピークは国交省の推計から2028年以降になるため、今後も多くの需要が待ち構えていることでしょう。SEMはこうした需要に長期にわたって応え続けていくことになると予想します。
粒子解析ソフトウェアなどを利用した自動化も取組中とのことでした。昨今は分析装置全般が誰でもより簡易にデータ取得できることを目指し、様々な分野や状況に応じた自動化にも取り組んでいます。
その分装置への負担は増えていき、装置耐久性や万全のサービス体制による長期サポートといった面の重要性も向上していきます。日本電子は歴史あるメイドインジャパンのメーカーとして装置耐久性やサービス&サポートに自信を持っており、それらの需要に応えるべく引き続き取り組んでいきます。
大石 亜衣 氏 (事業推進グループ マネージャー)
