ライフサイエンス向け 核磁気共鳴装置 (NMR)
NMR (核磁気共鳴装置) は、強磁場中で原子核の共鳴現象を利用し、生体分子の構造や分子間相互作用、動的挙動を非破壊で解析できる分光装置です。溶液状態や固体状態の試料を原子レベルで解析できるため、タンパク質や核酸の立体構造解析、代謝物解析(メタボロミクス)、薬剤と生体分子の相互作用解析、細胞・組織中の分子状態評価など、ライフサイエンス分野における幅広い研究に活用されています。
製品一覧
核磁気共鳴装置 (NMR) の解析手法
ライフサイエンス分野では、解析対象や取得したい情報に応じて、さまざまなNMR解析手法が用いられています。タンパク質の立体構造解析、分子間相互作用の検出、製剤中成分の状態評価など、目的に応じた解析アプローチを選択することで、生体分子の詳細な情報を取得できます。
分子間相互作用の検出 (創薬シーズスクリーニング)
溶液中のリガンドは、それが単独で存在する場合と、標的タンパク質と相互作用する場合とでは、磁化移動の効率や緩和の過程に顕著な違いが生じます。この違いを利用することで、薬剤候補となるリガンドの結合の有無を判定することができます。
測定手法としては、STD (Saturation Transfer Difference)、WaterLOGSY、CPMG・T1
ρ法などが知られますが、それぞれ信号の検出原理が異なり、相互作用の強さに対する検出感度を異にします。そのため、複数の手法を相補的に用いることでスクリーニングの信頼性、網羅性を高めることができます。得られたスペクトルデータは、統合的な解析環境(下図)において処理することで、解析効率が高まり、より高いスループットでの評価が期待できます。
NMR解析ソフトウェアJASONのプラグインツール:AffinityScreen
タンパク質構造解析
各種多次元多重共鳴測定により、タンパク質を構成する各原子の信号を帰属することができます。
これを基にして、受容体(タンパク質)に結合する薬剤分子の結合部位の特定をはじめ、分子認識の詳細の解析、立体構造決定、運動性評価などが可能になります。
トロポニンC (TnC) とトロポニン I (TnI)
は筋肉の収縮を制御する因子で、カルシウム濃度依存的に互いに複合体を形成します。Tirasemtivはこの複合体の界面に結合する低分子の薬剤リガンドであり、同タンパク質の活性化状態を維持する機能があります。
下の測定例は、13C/15Nに標識された骨格トロポニンC/ トロポニンI (sNTnC-sTnI) のキメラタンパク質 (17 kDa)
に対して等量のリガンドTirasemtivを加えたものです。リガンドが強くタンパク質に結合し、スペクトルの様子が大きく変化するのがわかります。信号の変化を帰属すれば、リガンド結合部位の特定を行うことができます。
化学シフトは核を取り巻く電子の環境変化に大変敏感です。下の例では、溶媒のpH の変化に伴う、リガンドの非解離の1H信号の化学シフト変化を追ったものです。変化の様子から、官能基の解離点 (pKa) を求めることができます。この例では、Tirasemtivは生理的pH付近の比較的狭い範囲に、ある構造状態があることが示唆されます。このようなデータは、作用環境と結合活性の関係を考える際の基礎的な知見となり得ます。
製剤解析
結晶形の違いは分子の溶解性や安定性などに影響を与えます。そのため、固形薬剤の結晶多型を把握することは、医薬品の品質を左右する重要な要素となります。固体NMR
は薬剤を粉末のまま測定することができ、結晶形の識別に有効な手段となります。
テオフィリン (咳止め、抗炎症作用医薬品) は、結晶化条件に応じて複数の結晶形を形成することが知られています。以下では、市販の医薬品とそれを蒸留水中で再結晶した試料の固体13C
スペクトルを示します。結晶形ごとに特徴の異なるスペクトルが得られ、これにより各結晶形が明確に識別できることがわかります。
上: 試薬と蒸留水中で再結晶した試料
下: OTC 医薬品のスペクトルとの比較。上段から試薬、再結晶品、OTC 医薬品。試薬と同じ位置にピークが現れており、OTC 医薬品には試薬と同じ結晶形の成分が含まれていることがわかります。
アプリケーション
NMRは、基礎研究から産業応用まで幅広い分野で活用されています。各分野における具体的なアプリケーション事例をご紹介します。
導入事例 / インタビュー
環境に調和する化学を目指して 測定装置が支える有機合成技術の革新
核磁気共鳴装置
東京大学大学院理学系研究科
小林修 教授
病気を治療・予防する医薬品や、産業、生活に欠かせないプラスチック・・・。
化学が生み出してきた物質は社会を豊かにしたが、その製造は、常に公害や環境汚染といった問題と背中合わせだった。東京大学の小林修教授は、環境に調和した化学の実現に挑み続けている。
関連製品
Life Science Note
ライフサイエンス分野の観察・解析に貢献するJEOLの装置、測定データを1冊にまとめました。
目次
ライフサイエンス分野の観察・解析に貢献するJEOLの装置
- 透過電子顕微鏡【JEM-3300 CRYO ARM™ 300 II】
- 透過電子顕微鏡【JEM-120i】
- 極微小単結晶構造解析【XtaLAB Synergy-ED】
- 集束イオンビーム加工観察装置【JIB-PS500i / CryoLameller】
- 走査電子顕微鏡【JSM-IT810】
- 核磁気共鳴装置【JNM-ECZL (ECZ Luminous™) シリーズ】
- 質量分析計【JMS-S3000 NewSpiralTOF™】
- 質量分析計【JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-Alpha 2.0】
お問い合わせ
NMRの導入をご検討中の方、解析手法についてご相談されたい方は、お気軽にお問い合わせください。
お客様の研究目的に最適なソリューションをご提案いたします。
TECHNOLOGY / CASE STUDY お客様紹介 / 開発秘話
インタビュー、導入事例、開発秘話の形式で、ユーザーの皆様からいただいた声をご紹介します。現在の課題について解決のヒントが得られるかもしれません。ぜひ、ご覧ください。
お問い合わせ
日本電子では、お客様に安心して製品をお使い頂くために、
様々なサポート体制でお客様をバックアップしております。お気軽にお問い合わせください。
