燃料電池触媒ナノ粒子の観察・解析
JEM-ARM200F を用いたサンプル情報の定量化 日本電子株式会社 科学・計測機器サービス事業部 サービス企画推進本部 R&D推進部
燃料電池(FC)は発電効率が高く、発電過程では水のみを排出するクリーンなエネルギーであることから、家庭用・車載用として今後広く普及することが予測されています。特にFC搭載車は、ガソリン車同等の走行距離・燃料補給時間が可能であり、次世代カーとして期待されています。しかしながら、発電・停止サイクルに伴うFCの劣化(電圧低下)が問題となっています。FC劣化機構解明のため、FCの直接観察および局所での分析が重要と考えられます。ここでは、FC触媒ナノ粒子に着目し、収差補正器を搭載した走査透過電子顕微鏡を用い幾つかの分析例をご紹介します。
粒子径計測
収差補正STEMを用いた高分解能での画像取得により、高精度での粒子計測が可能となります。また、円形度・フェレ径 等の 粒子諸形態の知見も取得することができます。
測定の流れ
例・・・燃料電池用触媒粒子における劣化サイクル前後の粒子径
粒子径/取得粒子数の検討
<測定誤差の検討>
取得した全粒子の円相当径から、100粒子、200粒子、400粒子、 600粒子、800粒子および1000粒子をランダムに抽出し、各グループの平均値および標準誤差を算出。
⇒500粒子以上の粒子径計測が必要と判断
円相当径-粒子数の関係![]() |
標準誤差-粒子数の関係![]() |
粒子径 ⇔ 組成の関係
粒子径計測およびEDSエリア分析を組み合わせることにより、1粒子の組成と粒径の関係について考察できます。粒径により組成の挙動が異なる場合、有効な分析手法となります。
測定の流れ
例・・・触媒粒子における劣化サイクル前後の粒子径およびPt/Co組成の関係について
加速劣化試験前後における触媒粒子の「Co比率−粒子径」
EDS ライン/マップ分析
マップ分析では、特定元素の有無あるいは濃度について2次元的な理解が可能となります。また、ライン分析ではより詳細なラインプロファイルを得ることができます。
例・・・燃料電池用触媒粒子における劣化サイクル前後の粒子断面組成の変化

【試料ご提供:名古屋大学教授 唯 美津木 先生】
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