GC-MS法による3,3‘-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)の分析1
MSTips No.292
概要
ウレタン樹脂の硬化剤等に使用される3,3‘-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン (以下MOCA)は、特定化学物質障害予防規則の特定第2類物質および特別管理物質に指定されており、これを取り扱う事業者には作業環境測定が義務付けられている。測定法としてはGC-ECD法を用いる米国労働安全衛生庁のOSHA Method 71(以下OSHA法)が推奨されているが、ECD検出器に用いられている放射線源の管理の煩雑さや測定装置としての汎用性に欠けるなどの問題がある。そこでGC-MS法によるMOCA測定についての検討を行った。本報告ではOSHA法に準じ誘導体化して測定した結果を、MSTips293 では誘導体化せずに測定した結果を報告する。
実験
測定装置にはJMS-Q1500GCを用いた。検出器をMSとした際に測定に必要な感度が確保できるかが焦点となるため、測定は標準サンプルでのみ行った。まずMOCAをトルエンで希釈し濃度20~800ng/mLの溶液を作成した。この溶液には内部標準物質としてp-Terphenyl-d14を濃度200ng/mLとなるように添加した。これをOSHA法に準じて誘導体化することで、誘導体化MOCA濃度0.5~20ng/mL、p-Terphenyl-d14濃度5ng /mLの溶液とし、GC/MSに導入して測定した。測定条件の詳細をTable1.に示す。
Table1. Measurement conditions
GC | |
---|---|
Sample | 1μL |
Column | ZB-1HT 15m length, 0.25mmi.d. 0.1μm film thickness (Phenomenex Inc.) |
Gas flow | He 1mL/min, constant flow |
Injection mode | Splitless |
Inlet Temp. | 300°C |
Oven temp. | 80°C→20°C/min→300°C (5min) |
MS | |
Ion source temp. | 250°C |
Interface temp. | 250°C |
Ionization | EI, 70eV |
Measurement mode | ①Scan m/z 50~700 (For R.T. check) ②SIM (For quantify) p-Terphenyl-d14: m/z 122,212,244 Derivatized MOCA m/z 300,623,658 ※Under line : Quantitative ion |
結果①Scan測定によるリテンションタイム確認
誘導体化MOCA 20ng/mLのクロマトグラムおよびマススペクトルをFigure1.に示す。

Figure1. Chromatograms and mass spectra
結果②SIM測定による下限濃度の再現性および検量線確認
誘導体化MOCAの各濃度におけるクロマトグラムをFigure2.に示す。下限濃度0.5ng/mLにおけるn=5繰り返し測定の面積値CVは4.7%となり、良好な再現性が得られた。またS/N感度も良好であった。

Figure2. Chromatograms of Derivatized MOCA
誘導体化MOCAの検量線をFigure3.に示す。相関係数(r)0.9999以上の良好な直線性が得られた。

Figure3. Calibration curve of Derivatized MOCA
まとめ
GC-ECD法を用いるOSHA Method 71 に対して、GC-MS法を用いた場合でも十分な有効性が確認できた。
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