ヘッドスペース/GC/MSをベースとしたモニタリングシステムによる水中のトリハロメタン・カビ臭原因物質の計測
MSTips No.272
はじめに
MSTips No.271 において、ヘッドスペース (HS) /GC/MSで、水中のトリハロメタンを含む揮発性有機化合物 (VOC) とカビ臭原因物質 (2-メチルイソボルネオール、ジェオスミン) を分析するためのメソッドを検討した。一方、弊社では水試料を自動でサンプリングし、内部標準物質などの必要な試薬を自動的に添加した後にヘッドスペースサンプラ(MS-62070STRAP)にサンプル瓶を搬送することができる「モニタリングシステム用バイアル搬送ロボット (MS-62180KTMS)」を開発・販売している。 MSTips No.271 において検討した「23成分VOC と2種類のカビ臭原因物質」に適応可能なメソッドを、モニタリングシステム用バイアル搬送ロボットと組み合わせたHS/GC/MS システムに適応することにより、水中のトリハロメタン類と2種類のカビ臭原因物質を1台のシステムでモニタリングすることが可能となる。 しかしながら、それらのメソッド・システムを水質検査のモニタリングシステムに応用する場合、長期間の定量性能を維持するために必要となる検量線補正機能、および内部標準物質の管理・運用方法についても充分な検証が必要となる。本アプリケーションノート (MSTips No.272) では、それらの検証を行った結果を報告する。
トリハロメタン・カビ臭原因物質 モニタリングシステム
モニタリングシステム用バイアル搬送ロボットMS-62180KTMSは採水からヘッドスペースサンプラーへのバイアルセットまでをロボットシステムにより自動化しており、ヘッドスペースサンプラーMS-62070STRAPおよびガスクロマトグラフ質量分析計JMS-Q1500GCに接続することで、水質検査を自動化することが可能となる。
- ヘッドスペース/GC/MSによる河川水や浄水の水質検査を自動化 (24時間モニタリング) 可能
- 1台でトリハロメタンとカビ臭原因物質の両方に対応可能
- ネットワーク経由で遠隔地から分析スケジュールの管理や結果確認の操作が可能
- 自動化によるヒューマンエラーの低減、生産性の向上が可能
- 休祝日や夜間の濃度変化にも対応可能

Fig. 1 Trihalomethane Mold odor Monitoring System
測定条件
試料は浄水場の実試料(浄水)にモニタリングシステムの内部標準物質自動添加機能を使用し、フルオロベンゼンおよびp-ブロモフルオロベンゼンが2.5 ppb、2,4,6-トリクロロアニソール-d3が20pptとなるように添加し、その長期的な面積値推移を評価した。
Table 1 Measurement conditions of HS-GC-MS
Head Space Auto SamplerHead Space Auto Sampler | MS-62070STRAP (JEOL Ltd.) |
---|---|
Sampling mode | Trap mode |
Sample temp. | 80°C (20 min) |
Gas Chromatograph | Agilent 7890A (Agilent technologies, Inc.) |
Column | DB-1 (60m×0.25mm (d.f. 1.0μm)) |
Column flow | 2.5 mL/min (Costant flow ) |
Oven temp. | 35°C (3 min) →10°C/min→ 250°C (5 min) |
Mass spectrometer | JMS-Q1500GC (JEOL Ltd.) |
Measurement mode | SCAN / SIM |
Ion Source temp. | 200°C |
Interface temp. | 250°C |
結果
Fig.2 に実証試験における内部標準物質のクロマトグラムのピーク面積値の推移を示す。測定は3時間周期、2カ月で500検体程度の測定となる。面積値にはばらつきが少なく、長期間安定していることが確認できた。

Fig. 2 Graphs of peak area of p-Bromofluorobenzene and 2,4,6-Trichloroanisole-d3
まとめ
ヘッドスペース/GC/MSをベースとしたモニタリングシステムによる、水中のトリハロメタンとカビ臭原因物質の実証試験を行った。その結果、安定性に問題がなく、モニタリングシステムとして有効であることが確認出来た。
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