GC/MS/MSを用いた生薬中の農薬分析

JEOL USA, INCアプリケーションデータ

はじめに

生薬の原料として栽培される薬用作物は、その他の農作物と同様に病害虫から作物を守るなどの目的として農薬が使用されている。そのため、近年では薬用作物の品質を管理するためにも栽培に使用された農薬成分について測定が行われている。今回は、ある生薬を実試料として用い、抽出及び精製後の試料に農薬を添加して測定を実施した。なお、本実験はアメリカ法人のJEOL USA, INC.にて、前処理から測定を実施した。

測定条件

乾燥した花のつぼみを混合溶液A (アセトニトリル:ジメチルアセトアミド = 90:10) 10 mLに浸し、15分間超音波抽出を行った。抽出液を約2500 rpmで10分間遠心分離後、混合溶液Aを用いて10倍希釈した。次に、Restek Q-sep QuEChERS dSPEチューブ (AOAC 2007.01 method4、PN#26125) を使用し、dSPEの手順に従って、希釈した抽出物1 mLを精製した。0.25 - 100 ppbの濃度範囲となるように、精製後の上清90 μLに各濃度の農薬標準溶液を10 μL添加して測定を実施した。GC-MS/MSの測定条件をTable1と2に示す。

Table 1) GC/MS/MS method

Table 2) SRM transition

結果

Fig. 1に1 ppbにおける8成分のSRMクロマトグラムとFig. 2にその検量線を示す。本測定では、実試料に標準試料を添加して測定しているため、実試料に含まれる夾雑成分の影響により、クロマトグラムの形状及び分離状況が悪化すると懸念されたが、結果として、Fig. 1に示すように良好なSRMクロマトグラムが得られた。また、異性体を多く含むCyfluthrinとCypermethrinのクロマトグラムの分離状況は良好であった。さらに、ピレトリン類に分類されるJasmolin Iにおいても1 ppbで観測されており、検量線も良好な直線性を示した。Table 3に農薬46成分における検量線濃度範囲と決定係数を示す。農薬46成分中42成分において、1 ppb以下でSRMクロマトグラムピークが観測された。うち27成分は0.25 ppbであった。さらに、検量線の決定係数は、46成分全てにおいて0.99以上と高い直線性を示した。

Fig. 1 Selected SRM chromatograms at 1 ppb.

Fig. 2 Selected standard curve.

Table 3) Concentration range and linearity of standard curve.

まとめ

生薬中の農薬46成分についてGC/MS/MS測定を実施した。JMS-TQ4000GCを用いることで、夾雑成分が多い生薬中の農薬分析であっても良好な感度と直線性が確保できることが示された。