ESR によるビールの香味安定性評価のご紹介-その1-
ER160002
発酵酒は、保管中に酸化反応による劣化を起こすことがよく知られおり、酸素の存在下では一定期間後に活性酸素種の生成が顕著となりますが、その寿命が短いため、その量を評価することは困難でした。近年、ビールにスピントラップ剤 (PBN:α-phenyl-N-t-butyl nitrone)を添加し、60度程度で強制酸化を行って活性酸素種を発生させ、これをスピンアダクトとして捕捉し、香味安定性と活性酸素の生成の相関からビールの香味安定性を評価する手法が開発されました[1][2]。
ESR によるビールの香味安定性評価の手順
- ビールのガスを抜く
- 試料にPBNを添加する
- 試料を60度程度で加温する
- 加温時間ごとに測定試料を採取する
- 水溶液セルを用いてESR測定
※水溶液セルについては、アプリケーションノートER-140001をご参照ください。

ESRによるビールの香味安定性は、強制酸化条件でスピンアダクト生成量(図1の ESR signal intensity)を時間に対してプロットし、変曲点の時間軸の値(活性酸素が顕著に生成開始するまでのラグタイム)により求めることができます。この値を求めるためのラグタイム測定プログラムがより使いやすく便利になりましたのであわせてご紹介いたします。
ラグタイム測定プログラムで出来ること
- 指定した ESR 信号強度の自動抽出
- ラグタイム の算出
- 測定データの自動プロット
- データの保存・呼出・印刷
- ESR 測定条件の保存
- CSV データでの出力

図1. PBNのスピンアダクトのESR信号
※PBN のスピンアダクトの ESR 信号については、アプリケーションノート ER-040006をご参照ください。

図2. ラグタイム測定プログラムの画面
References
[1] M. Uchida and M. Ono (1996) J. Am. Soc. Brew. Chem., 54(4), 198-204.
[2] M. Uchida, S. Suga and M. Ono (1996) J. Am. Soc. Brew. Chem., 54(4), 205-211.