材料のESR−ゴム (2)
ER200005
シリコンゴム
シリコンゴムは、ケイ素と酸素によるシロキサン結合を骨格とし、そのケイ素にメチル基を主体とする有機基が結合しています(図1)。そのため、有機系のゴムに比べて、耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、化学的安定性を備えています。シリコンゴムは、家電製品・機械・自転車などの部品や電線などに利用されています。 アプリケーションノートER200004に記載されているように、室温ではシリコンゴムからは顕著なESR信号は観測されませんでした。
図1.シリコンゴムの一例
加熱により観測されたシリコンゴムのESR信号
市販のシリコンゴムを短冊状に切り、5φ の試料管に入れて、室温と300°C、350°C、400°Cにてそれぞれ3時間加熱したときのESR信号を観測しました(図2)。図3は、g値を縦軸に、加熱時間を横軸に示しています。室温では顕著な信号は観測されていません。試料を300°Cにて加熱すると、その直後はg=2.0047を示し、加熱時間が長くなるとともにg値の値が小さくなり、3時間後にはg=2.0040を示していました(図2、3)。試料を350°Cにて加熱すると、その直後はg=2.0044を示し、加熱時間が長くなるとともにg値の値が小さくなり、3時間後にはg=2.0032を示していました。試料を400°Cにて加熱すると、その直後はg=2.0035を示し、加熱から約30分でg=2.0030に変化し、3時間後にはg=2.0028を示していました。これは試料が高温になることにより劣化が進行し、炭素中心ラジカル(g=2.0030)が増加している様子を示しています。試料に対する加熱温度やその時間により発生するラジカルが変化する可能性があります(図3)。
図2. 加熱により観測されたESR信号
図3. 加熱によるg値の変化
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