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光と電子の強い相互作用(5) *** ESRとFMR 線幅の周波数依存性 ***

ER200010

Application Note ER200009 に示した、透過型ESR・FMR測定法を用いると、スピン濃度の濃い試料で生じる『スピン-キャビティ結合(Purcell effectや強結合状態を生む相互作用)』の影響を受けないでスペクトルの解析ができる。得られる試料に固有の線幅の値は、Cooperativity(= g m 2 /𝑘𝑐 ∙𝛾𝑚 , 𝑘𝑐 , 𝛾𝑚 はHWHM(半値幅))と呼ばれる、光子とスピンの相互作用の程度を表す重要なパラメーターを算出するのに必要となる。図1(a)は、Application Note ER200006 に示した常磁性であるDPPHの線幅の、周波数依存性である。図1(c)は、 Application Note ER200008 , ER200009 に示したYIG薄膜FMRの線幅の、周波数依存性である。

図1 透過型ESR・FMR測定法によるスペクトル線幅の周波数依存性。

図1 透過型ESR・FMR測定法によるスペクトル線幅の周波数依存性。

(a) DPPHの線幅周波数依存性。(b) DPPHスペクトルと線幅。(c) YIG薄膜FMRスペクトル (Peak A) の線幅周波数依存性。(d) YIG薄膜FMRスペクトルと線幅。

Damping定数と膜品質

常磁性体と強磁性体では、スペクトルの線幅の周波数依存性に顕著な違いがみられることを、図1(a)と(c)に示した。FMRスペクトルの線幅は、観測周波数に比例してその線幅が変化する性質を持ち、その傾き𝛼をDamping定数と呼ぶ。強磁性材料を評価するうえで、このDamping定数𝛼は非常に重要である。例えば強磁性薄膜材料における、FMRスペクトルの線幅は、

ΔH = 𝛼𝑓 / |𝛾𝑒| + ΔH0

のような関係性をもつ。この式における切片成分 ΔHは、成膜の膜質の均一性を表しており、ゼロでないときは不均一膜になっていることを意味する[1]
近年、強磁性薄膜材料を用いたスピントロニクスデバイスの研究が盛んになっており、 Damping定数𝛼の評価に対する期待も小さくない。一般的にはベクトルネットワークアナライザーで評価されることが多い。導波管を用いる方法では、感度の悪さは否めないが、材料の形状の制約が少ないこと、マイクロ波のベクトル均一性が高いといったほかの手法にはない利点がある。

図2 強磁性薄膜の膜質の違い。

図2 強磁性薄膜の膜質の違い。

(a)均一な膜質。(b)不均一な膜質。

Reference: [1] J. M. Shaw, H. T. Nembach, and T. J. Silva, J. Appl. Phys. 108, 093922 (2010).

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