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光と電子の強い相互作用(6) *** 結合強度と線幅の関係 ***

ER200011

『Purcell effect』が支配する状態で、常磁性試料のESRスペクトルを測定すると、線幅の異常増大が起きることをApplication Note ER200006で 示した。キャビティを用いて、スピン濃度の高い試料を測定する場合、どの程度まで試料位置をずらして充填率を下げれば、『Purcell effect』が生じない程度まで結合強度を下げられるのか?という問題は、常磁性試料のみならず、強磁性材料を評価するときには切実な問題となることが予想される。そこで、ER200006で用いた同じ試料を、図1(a)に示すようにキャビティ内に配置し、その垂直上向き方向の位置をずらしながらESRスペクトルの線幅ΔHppと、キャビティ周波数のシフト量Δfを同時計測した(図1(b)参照)。

図1 サンプル位置移動による線幅とキャビティ周波数測定実験の模式図。

図1 サンプル位置移動による線幅とキャビティ周波数測定実験の模式図。

(a) キャビティ内のサンプルの位置。(b) キャビティ周波数のシフト量Δf値(上段)とESRスペクトル線幅ΔHppの計測例

Purcell effect 状態での周波数シフトと線幅の関係

『Purcell effect』が支配する状態において、マイクロ波光子とスピンの結合定数gmは、充填試料量が多いほどキャビティ周波数のシフト量 Δf は大きくなることから、明らかに相関関係にあると考えられる。Qu=18000、𝛾𝑚 ∕ 2𝜋(HWHM)=3.39 MHzと仮定して、様々なgmの値に対するシフト量Δfの値をシミュレーション[1,2]してみると、gmの値に対して2次関数に従う相関を示した(図2(a)参照)。したがって、ESR計測時のキャビティ周波数のシフト量 Δf を、 g m 2 に比例する物理量とみなし、Δf に対して観測線幅ΔHppをプロットすれば、相互作用のない試料本来の線幅と、最適な充填率(試料の位置)が決定できると考えられる。図2(b)に示すように、それぞれの試料位置において観測された線幅は、Δf を横軸にしてプロットすると、切片を持つΔf の1次関数で近似できることがわかる。線幅の変化が見られなくなる場所まで試料を移動することで(この試料の場合は+30 mm以上)、高濃度のスピン量をもつ試料であっても、マイクロ波光子とスピンの相互作用に影響されない『弱結合』状態での正常なスペクトル測定と解析が可能となる。かなり煩雑な作業ではあるものの、この実験は『強結合』状態となりうる、さらに高濃度の磁性体試料のESR・FMR測定でも有用であり、このプロットを利用して、光子とスピンの相互作用の及ぼす影響に関する研究にも使えると考えられる。

図2 結合強度𝑔_𝑚とキャビティ周波数シフト量Δfのシミュレーション (a) と、観測された ΔfとESRの線幅ΔHppの相関関係プロット (b)。

図2 結合強度gmとキャビティ周波数シフト量Δfのシミュレーション (a) と、観測された ΔfとESRの線幅ΔHppの相関関係プロット (b)。

Reference: [1] E. Abe, H. Wu, A. Ardavan, and J. J. L. Morton, Appl. Phys. Lett. 98, 251108 (2011).
[2] 特許公報(B2) JP 6660842 B2 "緩和時間測定方法及び磁気共鳴測定装置".

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