温度可変装置 (ES-13060DVT5) による長時間測定
ER210010
温度可変装置 (ES-13060DVT5)
温度可変装置 (ES-1306DVT5) はキャビティーと組み合わせることで–170°C~+200°C の温度範囲でのESR測定が可能となります。液体窒素 (低温側)、または空気 (高温側) を加温して温度制御を行います。液体窒素デュワーは標準の10 Lデュワーのほかにオプションで30 Lデュワーがあり、こちらを組み合わせることで長時間の温度制御にも対応できます。低温での連続運転時間は、10 Lデュワーでは-160°Cで約70分、-150°Cで約90分ですが、30 Lデュワーではいずれの温度でも約3倍の長時間運転が可能となります。この装置では固定温度や温度を任意で変化させながらESR測定を行えます。測定温度を自動で連続的に変化させる場合は、温度ごとにマイクロ波条件 (周波数や結合度など) の再調整が必要となりますが、ESR装置の分光計に自動で行わせることも可能です。
測定例
堆積物から抽出した石英にガンマ線を照射した試料を-150 ~ 50°Cの範囲で2°Cずつ昇温しながら自動連続測定を行いました。各温度でのマイクロ波条件の再調整を含めた測定時間は約7時間でした。10 Lデュワーでは約5時間で液体窒素が枯渇したため測定は継続できませんでした。
-150°Cでは、Al centerとTi-Li centerが明瞭に観測されていますが、温度の上昇にともない、これらの常磁性中心の横緩和時間 (T2) は急激に短くなり、広幅化による微細なスペクトル構造の消失と共に信号強度が低下し、24°Cではほとんど観測できなくなりました (図1)。図2は-150 〜 50°Cまでの全ESRスペクトル (101スペクトル) を等高線グラフで表示しました。この図より成分ごとの線幅や強度の温度依存性を俯瞰的にとらえることができます。このように、温度可変装置に30 Lデュワーをご使用いただくことでESR信号を低温にて長時間にわたり観測することが可能となります。

図1. 石英のESR信号の温度変化

図2. 石英の ESR 信号の温度依存性
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