あらゆる情報を得るための信号検出システム
IB2020-02
複合ビーム加工観察装置JIB-4700FのSEM鏡筒は、Fig.1に示す鏡筒内検出器(UED、USD)を含む複数の検出器を取付け可能であり、試料から発生する信号電子を効率的に取得できる。物性・化学組成・結晶構造などを反映した多様なSEM像を取得できるので、様々な試料に対して、加工位置の選択やFIB加工面の観察などの目的に応じた快適な観察が可能である。

Fig.1 JIB-4700Fの信号検出器システム
LED/USD/UEDの応用例
Ni上に成長した単層グラフェンを3つの検出器で同時に観察したSEM 像をFig.2~4に示す。USD(上方二次電子検出器)で単層グラフェンの存在を明瞭に確認することができている。
加速電圧: 1.5 kV, WD: 3 mm

Fig.2 LED
短い作動距離(WD)の時には試料の凹凸情報を捉える。コインシデントWDではFIB断面の二次電子像観察に適している。

Fig.3 USD*
主に低エネルギーの二次電子を検出できる。そのため試料の表面状態に敏感であり、試料最表面を観察することが可能である。

Fig.4 UED
検出器前面にエネルギーフィルターを備え、様々な情報を選択的に取得できる。低加速電圧での反射電子による観察が可能である。
BEDとTEDの応用例

試料:超硬ドリル断面、加速電圧:5 kV、WD:8.5 mm
Fig.5 BED*
試料直上に検出器が配置されているため、効率よく反射電子を検出できる。
FIB加工面の組成観察に適している。

試料:ホウレンソウの葉、加速電圧:5 kV、WD:8.5 mm
Fig.6 TED*
薄膜試料を用意することで透過電子顕微鏡像を観察できる。
STEMホルダーを用いれば、追加工と断面観察を繰り返し、高品質な薄膜試料が作製できる。
コンクリート用ドリルの断面観察への応用
表面研磨した試料は形状情報が乏しく、二次電子では試料の特徴をつかみづらいことがある。BEDであれば組成コントラストが強調され、平坦な試料でもその特徴を把握することが可能である。
前処理として表面に機械研磨処理を行ったコンクリート用ドリル(Fig.7, 8)の銀ロウ部分と超硬合金部分の境界の断面観察を試みた。

Fig.7 コンクリート用ドリルの写真

Fig.8 切断面のSEM像
加工位置決定のための表面観察
異方的に電子を検出し、照明効果により試料の凹凸が強調されるLEDによる観察像(Fig.9)では、研磨痕のコントラストが支配的で銀ロウと超硬合金の区別がつきづらい。試料直上に配置した半導体検出器を使用した元素組成や結晶方位に由来したコントラストが観察できるBEDの観察像(Fig.10)では組成コントラストが強調され銀ロウと超硬合金の判別が容易である。

Fig.9 銀ロウ-超硬合金部の境界付近のLED像

Fig.10 銀ロウ-超硬合金部の境界付近のBED像
断面観察・分析
BEDを活用することで銀ロウと超硬合金の境界部分の断面観察をすることができた。EDS*による分析結果と組み合わせで BED像のコントラストが原子番号に由来していることも確認できる(Fig.11,12)。

Fig.11 BEDによる断面観察像

Fig.12 断面のEDSマッピング
* オプションアタッチメント
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