マルチサイトデカップリング法
NM050014
19Fデカップリングの実験では、19Fの広範な化学シフト(図1)により、大抵の場合完全デカップリングが達成できません(図2)。マルチシーケンサ方式を採用するJNM-ECAシリーズでは、一つのチャンネルに対して複数のRF源をアサインすることが可能です。そこで、異なった照射オフセットのRF源から同時にデカップリング照射をおこなうことにより、効率よく全領域のデカップリングを実現することができます。また、それぞれの帯域を限定できるために出力を抑えることができ、発熱の問題を簡単に回避できます(図3,4)。例えば、CF3CHFCF2OCH2CH3では、19Fの信号が-80ppm付近と-212ppm付近の2カ所にそれぞれ集まっています(図1)ので、それらの領域をそれぞれ独立してデカップルすることにより、19Fとのカップリングが完全に消去された13C{1H,19F}スペクトルを得ることができます(図5)。多くの含フッ素化合物に見られるような、それぞれがある程度離れたいくつかの領域に信号が集中するサンプルに大変有効です。ただし、それぞれのデカップリングパルスが互いに干渉するような条件では、デカップリングの効率をかなり悪化させますので、オフセットが近いなどの理由で干渉が起きた場合には、それぞれのコンポジットパルスデカップリン グ列を変更したり、デカップリング出力を下げるなどの検討が必要になります。
図1 CF3CHFCF2OCH2CH3の19F{1H}-NMRスペクトル
図2 CF3CHFCF2OCH2CH3の13C{1H,19F(‒150ppm)}-NMRスペクトル
※19Fを‒150ppmを照射中心としてデカップリングしているが、デカップリング帯域が届いていないために全くデカップリングできていない。
図3
図4 19F二重照射パラメータ設定画面
図5 CF3CHFCF2OCH2CH3の13C{1H,19F(‒80ppm,‒212ppm)}-NMRスペクトル
測定装置:JNM-ECA500