食感に関わるアイスクリーム組織の定量評価
SM68
アイスクリームの氷のサイズと気泡の分布は食感に大きく影響するため、それらの定量評価は美味しさを測る一つの指針となります。今回紹介するクライオSEM法は食品や化粧品などの含水サンプルを高分解能で観察できる手法です。ここではクライオSEM法を用いたアイスクリームの断面観察および氷と気泡の定量評価の例をこ紹介します。
アイスクリームのクライオSEM評価法
図1・2はクライオSEM装置のクライオチャンバー内で割断したアイスクリーム断面の二次電子像です。-120°Cの平滑断面(図1)では氷と糖液の区別が困難ですが、SEM装置内の高真空中でサンプルを-90°C付近まで昇温すると氷の昇華速度が上がり、アイスクリーム内の氷部分の輪郭が強調されます。図2は各成分のコントラストが鮮明になった二次電子像です。

図1 平滑断面の二次電子像(-120°C)

図2 昇華後の二次電子像(-90°C)
画像解析 -クライオSEM像-
氷の昇華によって氷、気泡、糖液の識別が容易となった図2の二次電子像を画像解析することで各成分の占有面積率やサイズ分布を算出することも可能です(図3(a)、(b))。
※画像解析にはAdobe Photoshop Elements 13 (Adobe社製)およびlmageJ (NIH製)を使用した。
各成分の識別

図3(a) 画像解析による各成分の識別と面積率評価
気泡サイズの分布

図3(b) 画像解析による気泡の粒度分布
アイスクリームの脂肪球観察例
高倍率で観察するとアイスクリームの風味に影響するとされる脂肪球も観察できます(図4)。左図(a)は糖液部分に存在する脂肪球を観察した二次電子像です。右図(b)は気泡の界面に密着した脂肪球を観察した二次電子像です。

図4(a) 糖液部分の脂肪球

図4(b) 気泡に密着した脂肪球
SEM用クライオシステム
SEM用クライオシステムはSEM観察用冷却ステージとクライオチャンバーで構成されます(図5(a) (b))。図5(a)のクライオチャンバー内で凍結された試料は冷却ナイフで割断され、蒸着ヘッドでコーティングされます。その後、接続されたSEM装置内の冷却ステージに搬送することで観察が可能となります。

図5(a) SEM用クライオシステムの外観(製品型式: MP-Z08181T)

図5(b) クライオSEM装置の構成模式図
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