AESの本領発揮! ~Spectrum Imagingを用いた高エネルギー分解能な測定事例~
AP2026-01
はじめに
産業技術総合研究所との共同研究により、各ピクセルにスペクトル情報が格納されたSpectrum ImagingがAESで可能になった。スペクトル情報を残すことで、分析後にピーク位置や形状といったスペクトル解析をすることが容易になった。今回は半導体サンプルに着目し、AESの高エネルギー分解能であることを利用した化学状態や仕事関数差の可視化例などを紹介する。
AESを用いたSpectrum Imaging
Dwell timeの短縮と、マルチチャンネル検出を組み合わせることで、測定時間を更に短縮した。
イメージ測定を繰り返すことで、任意のエネルギー範囲でのSpectrum Image測定が可能になった。
→高空間分解能・高エネルギー分解能のスペクトルマップが任意のエネルギー範囲で短時間に取得可能

FIBによるBOX加工したMOSトランジスタの測定事例
MOSトランジスタをFIBによりBOX加工したサンプルについてSpectrum Imagingを測定した結果、左図の面分布よりOとSi(oxide)の分布や、WとSi(Silicide)の分布が一致していることがわかる。さらに、45度傾斜ホルダにより10 nm程度のゲート酸化膜の構造まで可視化できた。
Spectrum Imagingは取得したデータを後から解析することができ、スペクトルの形状やピーク位置といった、化学状態による違いを利用した分布の抽出が容易である。


pnpトランジスタの仕事関数差可視化事例
下記は、模式図に示すようなシリコンpnpエピタキシャルプレーナ型トランジスタの分析結果である。不純物半導体では、ドーパントによってフェルミ準位が異なっているために、フェルミ準位から真空準位までのエネルギー差である仕事関数も異なる。
そのため、オージェ電子の運動エネルギーは一定であるが、この仕事関数差の違いによって実際のスペクトルも、p型Siの領域とn型Siの領域とでSi KLLピークの位置が約0.6eV異なっていた。SEM像では判別不可能ではあるが、Spectrum Imagingによって仕事関数差に起因するピーク位置の違いを可視化することができた。

IRフィルターのバンドギャップ可視化事例
左のスペクトルはTiO2、SiO2の標準サンプルの加速電圧2 kVでの分析結果である。反射電子ピークのガウスフィットと同じ半値幅を持つピーク時に、実スペクトルの立ち上がり部分をフィットすることでバンドギャップを求めることが可能になった。
中央のスペクトルと右のマップはTiO2、SiO2の積層膜を分析した結果である。Spectrum Imagingから抜き出したスペクトルからそれぞれの層立ち上がりの位置が異なっていることがわかる。この違いを用いてマップを構築した。

まとめ
- AESによるSpectrum Imagingにより分析後の解析が容易になったことで、より幅広い解析への応用が期待できる。
- Spectrum Imagingの活用としていくつかの測定結果を紹介した。
- 元素分析のみならず、化学状態別の面分布の可視化を容易に行うことが可能になった。
- 高エネルギー分解能の測定を行うことで、仕事関数差の面分布可視化が可能になった。
- 反射電子を用いたEELS測定でバンドギャップの面分布が可視化可能になった。
