アルカロイド類有機化合物の分子構造解析
ED2022-05
XtaLAB Synergy-ED および日本電子装置によるアルカロイド類有機化合物の分析
アカネ科カギカズラの鉤
Rhynchophyllineの化学構造式
Rhynchophylline微小結晶の
XtaLAB Synergy-ED電子回折
構造解析結果
アルカロイドは、窒素を含む主に塩基性の有機化合物です。
植物由来の化合物が多く、薬用植物の主成分として利用されているものもあります。アルカロイドの生合成は多岐にわたり、複雑な分子立体構造の化合物を形成します。
XtaLAB Synergy-EDは、医薬品試験試薬などの粉末試料をそのままの状態で電子回折構造解析を行うことが可能です。
さらに日本電子の質量分析計 (MS) および核磁気共鳴装置 (NMR) による精密な化学構造分析と組み合わせることで、サブミクロン結晶のより最良な分子構造解析が可能です。
Rhynchophylline分子の化学構造分析
アルカロイド類の分子化学構造は、質量分析計SpiralTOF™-plus 2.0による精密質量測定や、核磁気共鳴装置ECZ Luminous™シリーズによる 分子化学構造の分析から詳細な解析が可能です。
左図は、RhynchophyllineのMSおよびNMR測定結果です。精密質量の 分析結果から、Rhynchophylline分子の組成式を調べることができます。
また二次元NMR測定から、1Hおよび13C原子核や1Hおよび15N原子核の 繋がりを分析することで、アルカロイド化合物の部分構造を解析することが可能です。これらを組み合わせることで、全体の分子構造を推定することができます。以下は、推定されたRhynchophylline分子の構造です。
MS・NMR分析結果より推定されたRhynchophylline分子の化学構造
左上 : JMS-S3000 SpiralTOF™-plus 2.0によるRhynchophyllineの
精密質量分析結果およびMS/MSスペクトル
左下 : JNM-ECZL 500RによるRhynchophyllineのEdited HSQCおよび
Edited H2BC NMRスペクトル
Rhynchophylline微結晶電子回折データの構造精密化
JNM-ECZL 500RによるRhynchophyllineのEdited H2BC
NMRスペクトルから確認された2結合離れたCHどうしの繋がり
XtaLAB Synergy-EDでは、Rhynchophyllineを微小結晶の状態で単結晶電子回折構造解析を行うことが可能です。アルカロイド類の化合物は、水素、炭素、窒素 および酸素などの元素を含みます。電子回折による分子構造解析では、電子回折データから得られた電子密度分布を基に解析を行います。
原子番号の近い元素から構成される分子の場合、分子によってはそれぞれの元素の違いや水素の数を推定することが難しい場合があります。
電子回折測定から得られた電子密度分布による初期構造は、MSおよびNMRから得られた化学構造情報を用いて最適化することが可能です。以下の右図は、MS・NMR分析結果により精密化されたRhynchophylline微小結晶の電子回折構造解析結果です。
XtaLAB Synergy-EDによるRhynchophylline微小粒子の電子回折結果
電子密度分布より得られた初期構造
XtaLAB Synergy-EDによるRhynchophylline微小粒子の電子回折結果
MS・NMR分析結果より精密化された分子立体構造
その他アルカロイド類有機化合物の分子構造解析例
他のアルカロイド化合物も、Rhynchophyllineと同様に解析することが可能です。以下は、MS・NMR分析結果より精密化されたCinchonidine微小結晶の電子回折構造解析結果です。 NMRで確認できた1Hおよび13C原子核や1Hおよび15N原子核の繋がりから精密化されました。



左: JNM-ECZL 500RによるCinchonidineのEdited HSQCおよびEdited H2BC NMRスペクトル
中央: JNM-ECZL 500RによるCinchonidineのEdited H2BC NMRスペクトルから確認された2結合離れたCHどうしの繋がり
右: XtaLAB Synergy-EDによるCinchonidine微小粒子の電子回折構造解析結果