構造による ESR 信号の線形変化
ER260001
構造の異なるニトロキシラジカルの ESR 信号
ニトロキシラジカルは ニトロキシル基 (NO) に不対電子が局在しており、窒素(14N)との超微細相互作用によって、等価な 3 本の ESR 信号が現れます。表 1 に示した 3 種類の試料を超純水で希釈し、室温にて同一条件(濃度、量、測定条件)で ESR 測定した例をご紹介します。TEMPO や 4-OXO-TEMPO(TEMPONE) の構造中で、不対電子のスピン密度が分布する NO 近傍の炭素原子に13C が存在する場合、13C との超微細相互作用が起こり、ESR 信号にさらに分裂が現れます。TEMPONE は 酸素 (O) 周辺が sp2 構造で平面のため運動的な制約を受けて緩和時間が長くなります。4-HYDROXY-TEMPO (TEMPOL) はヒドロキシル基 (OH) 周辺が sp3 構造のため周りの結合に回転の自由度があります。これらの構造の違いより、TEMPOL に比べて TEMPONE は線幅が狭く、13C の信号が観測されています。このように、わずかな構造の違いが ESR 信号の線幅や線形に反映されていることがわかります。
表1. 試料の特徴
| 分子名 | 構造的特徴 | 極性 | 水溶性 | ESR信号の特徴 |
|---|---|---|---|---|
| TEMPO | - | 非極性 | 低い | 14N由来の 3 本線と13C 由来の分裂 |
| TEMPONE | TEMPO の 4 位に OH 基が付加 | 中程度 | 中程度 | 14N由来の 3 本線と13C 由来の分裂 |
| TEMPOL | TEMPO の 4 位に C = O 基が付加 | 高い | 高い | 14N由来の 3 本線 |

図1. ニトロキシラジカルの ESR 信号
