ESR によるシリコン単結晶の欠陥の対称性評価
ER260005
ESR による欠陥構造の評価
シリコンは物理的・化学的性質に優れ、安定性が高く、加工しやすくコストとのバランスにも優れていることから半導体材料としてとても重要です。 シリコン半導体の特性や信頼性は、結晶中に存在する欠陥の種類や構造に大きく影響されます。 ESRは不対電子を有する欠陥を直接観測できるため、欠陥の存在、さらにその対称性や配向に関する情報を得ることができます。シリコンの結晶方位に対する外部磁場の方向を変化させることで、その ESR 信号の角度依存性の解析から、スピンの有無に加え、不対電子を有する欠陥の対称性や配向、電子軌道の状態、さらには結晶中における局在構造を詳細に明らかにすることが可能です。
ESR測定から得られる情報
- 欠陥の存在の確認
- 欠陥の対称性の評価
- 欠陥の配向解析
- 欠陥の電子状態の評価
シリコン単結晶の測定例
シリコン単結晶の ESR 信号の角度依存性から欠陥構造を評価した例をご紹介します。シリコン単結晶にて、外部磁場と結晶軸([100]、[110]、[111] など)の相対角度を変えて ESR 測定を行うと、ESR 信号の共鳴磁場や g 値がその角度に応じて変化します。ここでは、[111] 方位のシリコン単結晶を用い、外部磁場の方向を変化させた際の g 値の変化を測定しました。図1 にシリコン単結晶で観測された ESR 信号を示します。図2 には、図1 の ESR 信号から求めた g 値と、計算によって得られた g 値との比較を示します。なお、軸対称の g テンソルモデルの式より g 値の計算値を求めました[1]。

ge: 観測される g 値
g⊥: [111]方向に垂直な面内の g値
g//: [111]方向の g 値
ESR 測定から得られた、g⊥= 2.0091 、g// = 2.0015 を用いて計算した値はその他の実測値とも良好に一致しているのがわかります。この結果から、観測された欠陥が特徴的な異方性を有することが確認され、ESR の角度依存測定が欠陥の対称性評価に有効であることが示されました。

図1. シリコン結晶の ESR 信号
(A) アモルファス相

図2. シリコン結晶のg 値の角度依存性
[1] Charles P. Poole, Jr., 1967, Electron Spin Resonance: A Comprehensive Treatise on Experimental Techniques/Second Edition, John Wiley & Sons Inc., p17.
