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JMS-S3000 "SpiralTOF™-plus2.0"および"msRepeatFinder V6"を用いたEO-POコポリマーの組成解析

MSTips No. 399

マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析計 (MALDI-TOFMS) は、ポリマーの分析において強力なツールである。MALDIはおもに1価イオンを生成するために、マススペクトル上のm/zはポリマーイオンの質量となる。高質量分解能MALDI-TOFMSを使用すれば、繰り返し単位や末端基の組成の違いによるポリマーシリーズの識別が容易に可能となり、またそれぞれの分子量分布を算出することができる。最近ではケンドリックマスディフェクト (KMD) 法を用いることで、複雑な高質量分解能マススペクトルに含まれるポリマーシリーズを容易に可視化することができるようになった。特に分子量が数1000以上になるとMALDIと並ぶ代表的なソフトイオン化であるエレクトロスプレー (ESI) 法では、多価イオンが主に生じやすいことが知られており、マススペクトトルを直接解析することはもちろんKMD解析も困難になることが知られている。そのため、コポリマーの分析においては特にJMS-S3000 "SpiralTOF™-plus2.0"の高質量精度とKMD解析の組み合わせが解析が有効となる。本報告では、msRepeatFinder V6に新たに機能追加された2元系コポリマーの探索機能とその結果である重合度プロットを用いたEO-POコポリマーの組成解析について報告する。

実験

サンプルには、市販のEO-POランダムコポリマー (EO-ran-PO, Mn~2500) および、PO-EO-POトリブロックコポリマー (PO-EO-PO, Mn~2700, EO 40%wt) を用いた。マトリックスにはDCTBを、カチオン化剤にはトリフルオロ酢酸ナトリウム (NaTFA) を用いた。マススペクトルはJMS-S3000 "SpiralTOF™-plus2.0"の SpiralTOF 正イオンモードを用いて取得した。それぞれのマススペクトルは、デアイソトープ処理を行いKMD解析に使用した。

結果

Figure 1にEO-ran-PO (a) およびPO-EO-PO (b) のマススペクトルおよびKMDプロット (Base unit PO) (c) を示す。マススペクトルから両者ともに分子量3000弱を頂点とする分子量分布をもつことがわかる。しかしマススペクトルは非常に複雑であり、そこから両者の組成の違いを理解することは困難である。
そこで両者のデアイソトープ後のピークリストをKMDプロット (Base unit PO) で表示した。このプロットでは、POの分布は横軸と水平方向に、EOの分布は右斜め上方向に展開される。KMDプロットを確認すると、両者のEOとPOの分布は大きく異なっており、EO-ran-POはEOの分布がPOに比べて広く、PO-EO-POはEOとPOの分布が同程度であることが可視化できた。

Figure 1 Mass spectra of EO-ran-PO(a), PO-EO-PO(b) and KMD plot of their deisotoped peak lists (c).

 

しかしKMDプロットからは、それぞれの重合度の分布はわからない。そこでmsRepeatFinder V6の新機能である2元系コポリマーの探索機能を使用した。この機能は2つのモノマーの組成、両末端基の組成、付加イオンを指定することで、ピークリストから2元系コポリマーのピークを探索する機能である。ここでは、Table1に示す条件で探索を行った。結果の1つとして重合度プロットが表示される (Figure 2)。重合度プロットは2元系コポリマーの2つのモノマーの重合度の組み合わせをプロットしたものである。Figure 2 (a)、(b) はそれぞれEO-ran-PO、PO-EO-POの重合度プロットであり、横軸はPOの重合度、横軸はEOの重合度、プロットの大きさはイオン強度を示している。重合度プロットの強度分布からEOとPOのモル比や重量比もあわせて算出される。PO-EO-POにおけるEOの重量比は40%とカタログ値の記載があり、今回の結果とよく一致していることがわかった。そのため、EO-ran-POについてもその構成比が推定できると考えられる。

Table 1 Search condition for the two types of measured EO-PO copolymer

Monomer1 Monomer2 End Group Alpha End Group Omega Adduct Ion Charge
C3H6O C2H4O H OH Na +1
(a) EO-ran-PO
Mol. %
EO PO
79.8 20.2
wt %
EO PO
75.0 25.0
(b) PO-EO-PO
Mol. %
EO PO
46.8 53.2
wt %
EO PO
40.1 59.9

Figure 2 DP plots of EO-ran-PO(a) and PO-EO-PO(b). The molar and weight ratios are also shown.

まとめ

本アプリケーションノートでは、2 種類のEO-POコポリマーについて、高分解能MALDi-TOFMSにより得られるマススペクトルをmsRepeatFinder V6の追加機能である探索機能を用いて解析を行った。重合度プロットを用いることで、コポリマーの2 つのモノマーの分布を分かりやすく表示できるだけでなく、モル比と重量比を算出できることを示した。

 

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