JMS-S3000 "SpiralTOF™-plus 2.0"
を用いたmPEG5K-Phosphateの分析
MSTips No. 402
はじめに
マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析計 (MALDI-TOFMS) は、 ポリマーの分析において強力なツールである。MALDIはおもに1価イオンを生成するために、マススペクトル上のm/zはポリマーイオンの質量となる。高質量分解能MALDI-TOFMSを使用すれば、モノマーや末端基の組成解析が可能となる。MALDI-TOFMSによる一般的なポリマー分析では、試料溶液にマトリックス溶液とカチオン化剤溶液を加えて測定を実施するため、正イオンモードで測定を行う。一方で、末端基に硫酸基やリン酸基を有するポリマーであれば、負イオンモードでの測定が可能となる。これまでにMSTips No.333において、m/z 1000以下のアニオン系界面活性剤の測定結果を報告した。今回は、末端基にリン酸基を有するポリエチレングリコール (数平均分子量5000) の測定を実施したので報告する。
測定条件

Fig. 1 Structure of mPEG5K-Phosphate
(Average Mn 5000).
測定試料として、 末端基にリン酸基を有するmPEG5K-Phosphate (Fig. 1) をメタノールで10 mg/mLに調製した。マトリックスとして、DCTB (trans-2- [3- (4-tert-Butylphenyl) -2-methyl-2-propenylidene] malononitrile) をTHFで20 mg/mLに調製した。マトリックス溶液と試料溶液を1:1 (V/V) で混合した後、ターゲットプレートにスポットし、風乾させ、LinearTOFモード (負イオンモード) とSpiralTOFモード (負イオンモード) にて測定を実施した。
測定結果とまとめ
LinerTOFモードとSpiralTOFモードによる測定結果をFig. 2に示す。両モードにおいて、mPEG5K-Phosphateのピークは脱プロトン分子として観測された。また、m/z 5000付近に分子量分布のトップが観測され、繰り返し単位はmPEG5K-Phosphateのモノマー (C2H4O) である44 u間隔であった。LinearTOFモードでは、質量分解能が低いために同位体ピークの分離は難しいが、SpiralTOFモードでは、高い質量分解能が得られており、同位体パターンが明確に観測された。
以上のように、JMS-S3000 "SpiralTOF™-plus 2.0" は、末端基にリン酸基を有するポリマーの分析においても非常に有効な分析ツールであることが示された。
Fig. 2 Mass spectra of LinearTOF mode(a) and SpiralTOF mode(b) .