オールインワンGC用オートサンプラによる
窒素キャリアガスを用いた水中の揮発性有機化合物(VOC)の分析
MSTips No.442
はじめに
GCのキャリアガスとして広く使われているヘリウムは、様々な事情により、一時的な価格の上昇やその供給状態の不安定化等の問題を抱えることがあり、供給の遅滞等が発生した場合には代替ガスとして別種のキャリアガスの使用検討が必要になる。
今回、HTA社製のオールインワンGC用オートサンプラHT2850Tと、ガスクロマトグラフ質量分析計JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zetaを使用し、ヘリウムの代替ガスとして窒素をキャリアガスに用いた際の検量線の直線性および下限濃度における再現性について確認したのでその結果を報告する。
HT2850T
JMS-Q1600GC
UltraQuad™ SQ-Zeta
実験
オールインワンGC用オートサンプラHT2850Tは、分析用途に応じてHSモード、液体注入モード、固相マイクロ抽出(SPME)モードに対応可能で、今回はHSモードを使用して測定を実施した。測定対象は、水道水質基準において規制されているVOCを含む25成分で、該当成分のうち1,4-ジオキサンは5, 25, 50, 250, 500 µg/L、それ以外の成分は0.1, 0.5, 1, 5, 10 µg/Lとなるように水溶液を調製し、測定試料とした。尚、各測定試料には、内部標準物質として、フルオロベンゼンおよびp-ブロモフルオロベンゼンを2.5 ppb、1,4-ジオキサン-d8を20 ppbの濃度で添加した。
各測定試料は、10mL当たり3gの塩化ナトリウムを添加した後、Table 1に示した測定条件下で測定し、検量線を作成した。また、下限濃度を試行回数n=5で連続測定し、定量値の変動係数(C.V.)を算出した。
Table 1. Measurement condition
結果
各試料を測定し、作成した検量線をFigure 1に、下限濃度のSIMクロマトグラムをFigure 2に示した。また、検量線の相関係数及び下限濃度を5回連続測定した際の変動係数(coefficient of variation, C.V.)をTable 2に示した。検量線の相関係数は、全ての成分で0.999以上であり、良好な直線性が得られている。また、下限濃度におけるC.V.も全ての成分で10%以下であり、水質検査において必要とされる20%を下回る結果が得られた。
結論
水質基準において規制されているVOCを含む25成分について、HTA社製のGC用オートサンプラーHT2850Tと、窒素キャリアガスを接続したガスクロマトグラフ質量分析計JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zetaを使用して測定した結果、検量線作成において良好な直線性が得られ、下限濃度についても水質検査が要求する感度・再現性を得る事が可能であった。
Figure 1. Calibration curves of each compound
Figure 2. SIM chromatograms of each compound
Table 2. correlation coefficient(→R) & C.V. of each compound


