ECZ Luminous™の新機能 2
~最新のNMR技術を用いた積算効率の改善~
NM220011
PCW法の概要とノイズ低減処理によるS/N向上効果
ECZ Luminos™においてPCW法 (Phase Covariance Weighted) 1) が実装されました。本機能はNMR信号に対して効率的なノイズ低減を行う手法になります。
ノイズ低減処理により、スペクトルのS/Nを大幅に向上させることができ、同じ測定時間でもより良いスペクトルを得ることができます。本機能はNMRソフトウェアDelta Version. 6.2以降のECZ Luminous™でPCW処理用ライセンスを取得することで使用可能です。
NMRの感度は他の分光計と比べると悪いといわれており、通常は繰り返し測定し、そのスペクトルを積算することでそれを補っています。
一方PCW法では単純に各積算スペクトルを足し合わせるのではなく、積算の度にRFパルスの位相、またはレシーバーの位相を変化させながら測定します。 そのようにして取得したNMRデータに対して位相共分散 (Phase Covariance) 処理を行い、結果として得られるスペクトルがPCWスペクトルになります。
主に13C, 29Si, 15N等の、直接観測に時間のかかる測定核や試料に対して有効です (図1~3)。また固体NMRにも適用可能です (図4) 。
図1~4のデータについて、いずれもPCW法で測定、処理したPCWスペクトルのほうが通常積算スペクトルよりもノイズが低減されて解析しやすい スペクトルになっていることがわかります。
図1 : Raffinoseの13C NMRスペクトル
a) 通常積算スペクトル, b) PCWスペクトル
図3 :Adenosineの15N NMRスペクトル
a) 通常積算スペクトル, b) PCWスペクトル
図2 : 1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11- Dodecamethylhexasiloxane の
29Si NMRスペクトル a) 通常積算スペクトル, b) PCWスペクトル
図4 : Sucroseの13C CPMASスペクトル (固体NMR)
a) 通常積算スペクトル, b) PCWスペクトル
1) 特許5882978