固体NMRで用いるサンプリングキットと試料調製手順
NM260007
本資料では、3.2 mm径および4 mm径の固体NMR試料管への試料の充填および取り出し作業について、下の図に示すサンプリングキットを用いて実施する際の注意点等を紹介します。
サンプリングキット および各パーツの名称と用途

1. 各部品の確認
使用する固体NMR試料管のスリーブ、ボトムキャップ、スピニングキャップ、(スペーサー)に傷や変形がないか予め確認してください。傷や変形したスリーブ、キャップを用いると回転不良の原因となり、試料回転中に試料管およびプローブを破損させる恐れがあります。傷や変形が認められた場合、別のスリーブ、キャップを使用するようにしてください。固体NMRではボトムキャップのマーカーによって試料管の回転を検出しています。そのため、マーカーが剥がれたり消えたボトムキャップを使用すると回転数を正しく読み取ることができません。その場合マーカーペンタイプのキャップの場合には塗り直し、レーザーマークタイプのキャップの場合にはきれいなキャップへの交換を行ってください。
1H, 13C核以外の核種を測定する場合、キャップ、スペーサーの素材について考慮する必要があります。測定核によっては部品由来のバックグラウンド信号が観測されるため、試料の信号として解析してしまわないように注意が必要です。そういった場合、事前に試料を充填せずにバックグラウンドデータを取得しておくことで解析を誤らずに済みます。

マーカーペンタイプ

レーザーマークタイプ
2. ボトムキャップの取り付け
試料管を触ることで、試料管に手の油が付着し、それがNMR信号として現れる場合があります。そのため試料管取扱時はゴム手袋をして作業をして頂くとそういったトラブルを防ぐことができます。サンプルガイド(ホルダー)にスリーブをセットし、上からボトムキャップを載せます。その後キャップ取付用のサンプルガイドをかぶせて押して取り付けます。


テーブル等を利用してキャップを装着すると斜め方向に力が加わってしまったり、必要以上に強く押し付けてしまうことで、キャップやスリーブの変形、破損に繋がってしまいます。
そのためこのような詰め方は推奨されません。
サンプルガイドを適切に用いると、決まった方向以外に必要以上に力がキャップに伝わることはありません。

3. (使用する場合)スペーサーのセット
スペーサーを利用することで
試料回転中に中の試料が動きづらくなり、回転が安定する。
少ない試料量において検出領域の中心に試料を集めることができる。
(スペーサーの種類によっては)気密性をあげられる。
温度コントロール時に試料の温度の偏りを軽減することができる。
といったメリットが得られます。
回転安定性の悪い形状の試料や試料量が少ない場合には特にスペーサーの使用がおすすめです。一方でスペーサーを使うことで有効体積が低下してしまいますので、感度(測定時間)を優先する場合はスペーサーは使用しません。
スペーサーの取り扱いについて、金属製のピンセットを使用すると傷をつけて破損してしまう恐れがあるため樹脂製のピンセットを用いてください。スリーブの先端にスペーサーを載せた後、サンプリングスティックを用いて、スリーブの奥に押し込んでください。

4. サンプルガイドへの試料管の取り付けと試料の充填
ボトムキャップが下方になるように試料管をサンプルガイド(ホルダー)にセットし、試料充填用のサンプルガイドを取り付けます。その上から3.2mmおよび4mm試料管の場合、試料を薬さじ1/2程度の量ずつを加え、その都度サンプリングスティックで押し固めます。これを繰り返し、試料を充填します。


サンプリングスティックの溝を利用して充填量が適切か確認します。理想的にはサンプリングスティックを用いて試料量を溝と同一の高さに正確に合わせることで試料を最大量充填できるのですが、実際には正確な高さ合わせをするのは難しいため、わずかに少なくなるよう調整することを心掛けると、安定して試料回転させることができます。その後、スペーサーを使用する場合は3. の手順で再度スペーサーをセットし、サンプルガイドを用いてスピニングキャップを取り付けます。

試料量の調整(スペーサー使用時)の例
5. 試料管の清掃
スリーブ、キャップなど全体にこぼれた試料、付着した汚れをふき取ります。汚れが落ちない場合はエタノールを含侵させたワイプを使用してください。
ただしマーカーペンタイプのボトムキャップを使用する場合、マーカーを消さないように注意してください。
6. 試料の取り出し
測定終了後の試料の取り出しについて説明します。キャップツウィザーを用いてキャップを引き抜き、サンプルスクレイパーで試料を削り出します。
スペーサーを使用している場合は、柄付き針をスペーサーの中心部に空いている穴に先端を差し込み、スリーブからスペーサーを引っ張って取り除きます。


耐熱性試料管やシーリング試料管は気密性が高いため、通常の試料管よりもキャップが抜けづらい場合があります。このような時には、無理に力を入れてキャップを外そうとせず、以下の手順に従ってください。
試料管を樹脂製ピンセットで保持します。
冷却スプレーを約30秒間噴射し、キャップを十分に冷却します。
冷却した状態で、キャップツウィザーでキャップを掴み、引き抜きます。
冷却によりキャップが収縮するため、容易に外すことができます。


