液中ホルダーを用いた顔料の高分解能観察
SM2026-03
はじめに
顔料はインキや絵具をはじめとするさまざまな着色材料に用いられており、鮮明な発色や色調の均一性、製品の安定性を維持するためには、顔料粒子の分散状態を適切に制御することが重要である。特に、顔料の粒径や凝集状態は色彩特性や保存安定性に大きく影響するため、その評価が求められる。
顔料粒子はナノメートルオーダーの大きさであることから、詳細な形態観察には電子顕微鏡が有効である。しかし、一般的な電子顕微鏡観察では試料を真空環境下に導入する必要があり、液体中に分散した顔料は乾燥処理を施してから観察される。そのため、乾燥過程で粒子の凝集や分散状態の変化が生じ、液中本来の状態を評価することが困難であった。
本アプリケーションノートでは、窒化シリコン膜を用いた液体封入ホルダーと高感度シンチレーター型反射電子検出器を組み合わせたSEM観察手法を紹介する。本手法により、液中に分散した顔料粒子をナノメートルスケールで高分解能に観察し、乾燥の影響を受けない分散状態の評価を可能にした。
Flow VIEW Tek製 液中ホルダーの原理
Fig.1に今回用いた液中ホルダーの外観写真および測定の流れを示す。液中ホルダーの膜越しにSEM像を観察することになるが、本手法では、Fig.2に示すように、Si3N4膜を20 nmまでに薄膜化することにより、電子線の透過性を改善した。
Fig.1 液中観察の流れ
Fig.2 液中ホルダーの模式図
高感度型シンチレーター反射電子検出器
高分解能SEM JSM-IT800およびIT810シリーズに搭載可能な高感度型シンチレーター反射電子検出器 (SBED) を採用することで、効率よく信号を収集できるため、インキのような電子線敏感なソフトマテリアルであっても、ダメージを軽減して観察できるようにした。
Fig.3に、従来の半導体素子型反射電子検出器とのライブ像の比較を示す。
試料:ABS樹脂断面
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半導体素子型反射電子検出器 | シンチレーター型反射電子検出器 |
|---|---|---|
| Dwell time : 41.7 nanosec/pixel |
Fig.3 シンチレーター型反射電子検出器の応答性
顔料の液中と乾燥状態での比較
Fig.4に白絵具中の顔料を液中と乾燥後に観察した結果を示す。液中観察では顔料が分散した状態で観察されたのに対し、乾燥後の観察では水分の蒸発に伴う顔料の凝集が認められ、粒子が局所的に集積した様子が確認された。
Fig.4 液中と乾燥状態での比較
ホルダーの膜厚の違いによる性能比較
Fig.5にホルダーの膜厚の違いによる顔料の観察結果の比較を示す。加速電圧5 kVおよび10 kVで取得した像を比較した結果、いずれの条件においても20 nm膜厚の方が高い像シャープネスを示し、特に5 kVではコントラストの向上も確認された。
Fig.5 ホルダーの膜厚の違いによる性能比較
まとめ
本検討により、液中ホルダーを用いることで液中に分散した顔料粒子を乾燥の影響を受けずに直接観察できることを確認した。また、ホルダー膜厚の薄膜化および高感度型反射電子検出器の適用により、SEM像のシャープネスおよびコントラストが向上し、液中における顔料粒子の高分解能観察および分散状態の高精細な評価が可能となることが示された。

