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HS GC-QMSおよびmsFineAnalysis iQを用いたコーヒー香気成分の差異分析 [GC-QMS Application]

MSTips No. 363

はじめに

msFineAnalysis iQは、四重極型ガスクロマトグラフ質量分析計による電子イオン化 (Electron Ionization, EI) 法マススペクトルを用いたライブラリーデータベース(DB)検索とソフトイオン化法マススペクトルによる分子量の確認を組み合わせた統合解析を行う自動定性解析ソフトウェアである。他にデコンボリューションによるピーク自動検出、2検体の差異分析およびリテンションインデックス (RI) 定性機能があり、EI法のDB検索のみを用いた場合よりも短手番で確度の高い定性分析を実現することができる。
コーヒーの香りには非常に多くの香気成分が含まれており、ガスクロマトグラム (TICC) において多数のピークが検出され、定性やサンプル間の違いを解析するのに時間を要する。そこでmsFineAnalysis iQでコーヒー香気成分の差異分析および統合解析を行い、その機能を確認したので報告する。

測定方法

測定にはトラップ型ヘッドスペース装置MS-62071STRAPと、GC-QMS装置JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zetaを使用し、イオン化法はEI法およびソフトイオン化法 (SI) として低イオン化エネルギー法を用いた。測定試料は、市販のインスタントドリップ式パック (A:開封直後、B:開封から5日後) で抽出したコーヒー2mLを使用し、ヘッドスペースで加熱した際の気相ガス成分についてEI法 (n=5) とSI法 (n=1) で測定した。HS GC-QMS測定の詳細条件をTable 1に示す。この測定データを用いて2検体比較(A,Bの差異分析)を試みた。
尚、差異分析の機能についてはMSTips No.348を参照のこと。

JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta w/ MS-62071STRAP

Table 1 Measurement Condition

GC
Column InerCap WAX
(GL Sciences Inc.)
60 m × 0.32 mm id, 0.5 μm
film thickness
Oven temp. 40°C (3min) → 10°C / min → 250°C (10min)
Carrier gas 1.5 mL / min
(Constant Flow)
Injection temp. 250°C
Injection mode Split 30:1
HS
Sample temp. 60°C
Heating time 15min
Sampling mode Trap
Number of sampling 3
Trap tube AQUATRAP1
(GL Sciences Inc.)
MS
Interface temp. 250°C
Ion source temp. 250°C
Acquisition mode Scan (m/z 29-400)
Ionization EI (70eV, 50μA)
SI (15eV, 30μA)

測定結果

Figure 1に差異分析結果 (ボルケーノプロット) を示す。開封直後 (A) と開封から5日後 (B) の成分数と検出量 (ピーク面積値) の違いが一目で確認できた。実際、Aに特徴的な成分は64ピーク (A Only 49ピーク,A>B 15ピーク)、共通成分は23ピーク (A=B)、Bに特徴的な成分は4ピークだった。次に、特徴的な成分の統合解析結果とマススペクトル (ID:010, 042, 075)を一例として示す。

Figure 1

Figure 1 Volcano plot of variance component analysis result between fresh coffee (A) and oxidized coffee (B)

開封直後 (A) の特徴的な香気成分として統合解析で推定された類似度900以上の化合物名をTable 2に示す。アルデヒド類、フラン類、エステル類、ケトン類、ピロール類、ピリジン類などが推定された。一例として"Furan,2-methyl-"(ID:010)、"Pyridine"(ID:042)、"2-Furanmethanol,acetate"(ID:075) のEI法およびSI法 (低イオン化エネルギー) におけるマススペクトルをFigure 2に示す。どの化合物においてもSIによる分子イオンが確認されており、また、ΔRI (基準値=|50|) からも検索結果を補完できた。

Table 2 Integrated qualitative analysis result of characteristic aroma components in fresh coffee (A)

Table2
Figure 2

Figure 2 An example of the mass spectra detected from fresh coffee (A)

開封から5日後 (B) の特徴的な香気成分として統合解析で推定されたすべての化合物名をTable 3に示す。開封直後 (A) で確認された成分は減少・消失した一方、エタノールが特徴的な成分として推定された。

Table 3 Integrated qualitative analysis result of characteristic aroma components in oxidized coffee (B)

Figure 2

A,B共通の香気成分として統合解析で推定された類似度850以上の化合物名をTable 4に示す。 Acetic acid、2-Furanmethanol、ピラジン類が特徴的な成分として推定された。

Table 4 Integrated qualitative analysis result of characteristic aroma components in both coffee of A and B

Table4

まとめ

本報告では、HS GC-QMS およびmsFineAnalysis iQによるコーヒー香気成分の統合解析 (差異分析機能) について紹介した。本手法を用いることで、多成分かつ様々な含有量の成分を迅速に識別できることが示された。このことからmsFineAnalysis iQによる統合解析は、定性解析精度の向上、作業時間の短縮、作業効率の向上を実現できるといえる。

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