「第70回 日本金属学会金属組織写真賞『最優秀賞』、『奨励賞』」の受賞
公開日: 2020/05/12
主催
公益社団法人 日本金属学会
受賞年月日
2020年3月17日(火)
受賞名
第70回 日本金属学会金属組織写真賞『最優秀賞』、『奨励賞』
最優秀賞
題名: CeO2触媒ナノ粒子を架橋する単一有機分子鎖の可視化
受賞者名 斎藤光浩、他
所属 東京大学・日本電子産学連携室
(東京大学幾原研究室、名古屋大学高見研究室、東北大学阿尻研究室での共同研究成果)
セリア(酸化セリウム)ナノ粒子は、特定の結晶面を表面に露出させることで、高い触媒機能の発現が予測されていたが、そのような表面は不安定であり、合成は不可能と考えられてきた。近年、表面に鎖状の有機高分子を修飾することで、特定の表面が発達した立方体ナノ粒子の均一な合成が可能となり、その形成メカニズムを解明するため、ナノ粒子表面の有機分子の可視化が必要であった。
本研究では、JEM-ARM200F を用いて、電子線の収束角、デフォーカス、環状暗視野検出器の検出角等、単一有機分子鎖の撮像に最適な観察条件を系統的に検討したことで、特定のナノ粒子表面に吸着している有機分子鎖が、他の粒子との間を架橋する様子を直接観察することに成功した。
今後、イメージングの可能性が新たな分野にも広がると同時に、セリアナノ粒子の触媒活性化プロセスの機構解明が期待される。

図1. (a)シリカ膜上に分散させたセリアナノ粒子のTEM像.(b)ADF像とEELSマッピング.
(c)セリア粒子上表面に吸着している有機高分子鎖のLAADF像.
(d)緑色のドットは(100)面上のCe原子,紫と橙色のドットはそれぞれ(110),(111)面上のCe原子を示す.
(e)計算像.(f)構造モデル.(g)セリアナノ粒子と吸着した有機高分子鎖の模式図.
奨励賞
題名: Co/Co6W6Cヘテロ構造ナノ粒子の原子分解能構造解析
受賞者名 熊本明仁、他
所属 東京大学・日本電子産学連携室
(東京大学幾原研究室、丸山研究室での共同研究成果)
単層カーボンナノチューブ(単層CNT)は、カイラリティと呼ばれるグラフェンシート一層の巻き方の違いによって電気的特性が変化することから、キャパシタやトランジスタ、電池材料など様々な用途への適用が期待されている。
現在、特定のカイラリティをもつ単層CNTの大量合成について学術界でも注目されているが、その形成メカニズムを明らかにするためには、特定カイラリティを形成できる単層CNT触媒ナノ粒子の構造を明らかにする必要があった。
本研究では、カイラリティ選択性が高いCo-W-C系ナノ粒子触媒について、JEM-ARM200F のHAADF-STEM、STEM-EDSを併用した構造解析を実施し、一つのナノ粒子中に介在する異相界面構造を原子レベルで明らかにすることに成功した。
この手法は、複数の金属で構成されるナノ粒子触媒のナノ計測法として、今後の単層CNT合成における技術革新に貢献するものと期待される。

図2. (a)Co/Co6W6C触媒ナノ粒子の原子分解能HAADF-STEM像.(b)HAADF-STEM像の平均像.
(c)[111] Co6W6Cのシミュレーション像.(d)構造モデル.(e)同一粒子から取得したCo元素(ピンク色)と(f)W元素(黄色).
(g)それぞれを重ね合わせたSTEM-EDSマップ.

