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ミュージアムパーク茨城県自然博物館

電子顕微鏡が体験できる博物館、操作はスマホ感覚

ミュージアムパーク茨城県自然博物館(茨城県坂東市)は、入館者が操作できる卓上走査電子顕微鏡(SEM)を導入しました。観察に必要な操作はすべてタッチパネル操作です。子どもたちに「また行きたい」と思わせる、魅力ある新たな展示になりそうです。

ミュージアムパーク茨城県自然博物館

SEMを体験する来場者と操作方法を教える横山館長

「もう一度行きたい」と子どもがねだる場所

茨城県自然博物館は年間40万人以上の入館者を誇る人気の博物館です。
国内の自然系博物館を見渡すと10万人台にとどまる博物館が多く、入館者数の多い博物館はそう多くありません。そうしたなか、茨城県自然博物館は自然系博物館の中では最も入館者の多い一つになります。

一方でアクセスがいいわけではないと横山館長は話します。
つくばエクスプレスの守谷駅から出るバスのうち、同博物館の開館時間に合う便は実質1日2本。しかも最寄りのバス停から10分ほど歩かなくてはなりません。土日祝日には博物館の敷地内に乗り入れる便が増発されますが、それも1日3本です(※1)。

では、どうして入館者が多いのでしょう。
茨城県自然博物館には小学校や幼稚園の団体を中心に年間7万人ほどが来館するといいます。しかも茨城県だけではなく、近隣の千葉県や埼玉県、あるいは東京都からも来るのだとか。見学を終えて家に帰ると「もう一度行きたい」と保護者にねだる子どもが多く、今度は保護者と一緒に自動車で訪れるという流れができているそうです。

  • 2025年4月時点の運行状況。ほかに東武野田線(東武アーバンパークライン)愛宕駅からのバス路線があるが、1時間に1本とやはり便数が少ないうえに最寄りバス停を下車してから15分ほど歩く。

ミュージアムパーク茨城県自然博物館

横山館長

ミュージアムパーク茨城県自然博物館

博物館入口

人を引きつける企画展、年3回ペースで

茨城県自然博物館の特徴の一つは企画展が多いこと。2024年11月に開館30周年を迎えた同博物館ですが、30年の間に91回の企画展を実施してきました。概ね1年に3回のペースです。

そしてこの企画展が「どれも面白い」と評判になるそうです。例えば、変形菌、地衣類といったマイナーなテーマでも入館者は10万人を超えました。子どもたちに「また行きたい」と思わせる面白い内容になるようスタッフたちが工夫をしているのです。

ミュージアムパーク茨城県自然博物館

館内には今までの企画展のポスターが並ぶ

一つ例を挙げますと、第87回企画展のテーマは「うんち無しでは生きられない!」でした(2023年7月8日~9月18日)。うんちが持つ多様な機能に着目しながらうんちが自然界で果たしている役割を紹介する内容で、ゾウやパンダなどの実物のうんちも凍結乾燥させて展示。その充実の内容に興味を持った読売新聞社と東京ドームが「うちでもやりたい」と博物館に協力を求め、同企画を再構成した展覧会「うんち展 -No UNCHI, No LIFE-」を東京ドームシティのGallery AaMo(ギャラリー アーモ)で開催したほどです(期間は2025年3月18日~5月18日)。

子どもたちに「また行きたい」と思わせる工夫は企画展にとどまりません。2025年2月、常設展示のコーナーにタッチパネルで操作できる卓上走査電子顕微鏡(SEM)を導入・設置しました。入館者がみずから操作してミクロの世界を体験できます。

ミュージアムパーク茨城県自然博物館

ぎっしりと並ぶ剥製や模型の数々

ミュージアムパーク茨城県自然博物館

博物館に珍しく水槽には実際の生き物までいる

国内博物館初の入館者が操作できるSEM、そこには館長の長年の思いも

導入したのは日本電子の卓上走査電子顕微鏡「JCM-7000 NeoScope™」です。
日本電子の製品を選択した理由は、低真空モードと高真空モードの両モードが使えるといった機能面の評価もありますが、ユーザーインターフェース部分の開発要望に日本電子がフレキシブルに対応したことが決定打となりました。観察に必要な操作は、すべてタッチパネル操作で直感的に可能です。スマホに慣れた子どもたちは特に苦もなく操作ができるでしょう。同館によるとこのような電子顕微鏡の体験展示は国内の博物館では初だそうです。

横山館長が以前、国立科学博物館に勤務していたときに、入館者にミクロの世界を体験してもらう企画を立て、何度か実施したことがありました。光学顕微鏡では見えない世界を電子顕微鏡で経験してもらおう。その貴重な体験に参加者はみな喜びましたが、一方でサポートするスタッフには反省が残りました。電子顕微鏡の操作は参加者に任せられないので常にスタッフが操作に当たる必要があり、時間の面でスタッフの負担が大きかったのです。この企画は3年ほどで止めてしまいました。

「スタッフの負担が軽く、入館者に喜んでもらう方法はないものか」。今回導入した電子顕微鏡は、館長の長年の思いに応える解決策でもあるのです。

ミュージアムパーク茨城県自然博物館

タッチパネルでの直感的な操作

ミュージアムパーク茨城県自然博物館

簡単なフローに従うだけで誰でも操作可能

電子顕微鏡で見られる試料は今のところ、①アライグマの毛、②放散虫(海洋性プランクトン)、③チョウの鱗粉、④アジサイの花粉の4種類(2025年6月27日時点)、拡大率は最大約2万倍までです。
導入してまだ日は浅いですが、「あっ、あそこだ」とまっすぐSEM展示に走ってきた子どもがいたとか。早くもリピーター増につながる博物館の魅力の一つとして知られ始めています。

新しい試料の準備も続々と進んでいます。そのほかにも「学校と連携しよう」「イベントの中で活用しよう」「10人程度の参加者を募り、それぞれ持ち寄った試料をSEMで観察してもらい、その画像を持ち帰ってもらおう」といった活用のアイデアがスタッフの間でいくつも検討されているようです。

「この博物館にまた行きたい」と思わせる企画が、このSEMを絡ませて次々と生まれてくる。その日が訪れるのはそう遠くないでしょう。

ミュージアムパーク茨城県自然博物館

プロフィール

横山 一己(よこやま かずみ) 氏
ミュージアムパーク茨城県自然博物館 館長

1972年金沢大学理学部地学科卒業。1977年東京大学大学院理学研究科博士課程修了。
ハワイ大学地球物理学研究所研究員、金沢大学工学部助手、オークランド大学研究員などを経て国立科学博物館に奉職。
国立科学博物館においては地学研究部研究員、同主任研究官、同地学第一研究室長、地学研究部部長を歴任。
2016年より茨城県自然博物館館長。

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